事例紹介

創業20年の節目の組織改革と人材育成「開発会社から、世の中にサービスを提供していく会社になろう」

モーション株式会社様
研修事例
2018.10.10

※本記事は2018年に日本クイント株式会社が作成した記事を再掲したものです。

 

株式会社モーション様は、1999年創業のシステムの受託開発から始められた会社です。ビッグデータ解析など、統計学をベースに、携帯電話管理サービス、交通系IT(タクシー呼び出しアプリ、無人型サイクルシェアリングサービス)、EV関連(電気自動車充電器管理システム、EVバイク向けバッテリーシェアリングサービス)などの様々な分野へと取り組みを拡げていらっしゃいます。

特に最近はクラウドをベースとしたサービス事業を展開され、例えば昨年(2017年)はtogethere(トゥゲザー)というライドシェアサービス、今年(2018年)は、Optamo(オプタモ)という、勤務シフトを統計学で分析して最適な勤務シフトを自動作成するというサービスをリリースされました。

 

目指す次のステージ

  • 技術者集団からマネジメント組織へ
  • 「モノづくり」から「サービスを提供する」企業へ
  • 従業員満足度を上げる、つまり「働き甲斐」があり、安心して誇れる企業へ

 

研修概要

  • 【講義】「モノづくりとコトづくりの違い」や「プロジェクトマネジメントとサービスマネジメントの違いと関係」を元に、そもそもマネジメントとは何かについて理解する講義を行いました。また、アジャイル開発、DevOps、リーンITなどの最新の手法やフレームワークの概念にも触れ、今後自分達がするべきことを考えるための情報をインプットしました。
  • 【演習】全社員参加型で現状の課題の洗い出し、優先度付けを行い、一人一人が何を感じて何を想っているのかを共有し、今後のあるべき姿を語り合うきっかけの場を作りました。課題の洗い出しや優先度付けには講義でも紹介した各種手法も活用し、今後の業務にも活かせるように手法を使ってみることも行いました。
  • 【主に活用したフレームワーク】ITIL®、リーンIT、PMBOK®

上記の研修の効果を含め、今後の事業発展に向けてどのような考えをお持ちか、また、人材開発や組織作りにおいて苦労されてきたこと、工夫されてきたことについて、代表取締役の上杉 顕一郎(うえすぎ けんいちろう)氏にお話を伺いました。

 

—今回の研修をご検討しただくことになった経緯を教えてください。

19年前にこのMotionという会社を創業し、今期(2018年度)で20期目に入ります。

アプリケーションの受託開発から始め、3~4年目からは、サービスビジネスも始めました。サービス提供は他社と協業で実施していて、私達Motion側は開発と保守に軸足を置いてきました。そのため、サービスビジネスは会社の売上の半分を占めているものの、実質「自分達がサービス提供会社だ」という感覚はあまりありません。「アプリケーション開発の技術者集団」という意識で19年やってきました。

しかし、創業20期目という節目が視野に入ってきて、この会社と社員の将来のことを考える中で、少し前から「開発会社から、世の中へサービスを提供していく会社になろう」と思うようになってきました。

(集合写真のためにOPTAMOのパネルを自ら運ぶ上杉氏)
—なぜ開発からサービス提供へシフトしたいと思われるようになったのでしょう?

受託開発は後に残らないですからね…。上がってきた要望をこなす。開発したアプリケーションを納品したら基本的にはそれで終わり。もちろん、それはそれで楽しいし、喜んでもらうとやりがいもあります。

しかし、創業メンバーとその後に参加したメンバーでは、状況も意識も異なります。

特に、事業が続くとメンテナンス業務やサポート業務が必要となる。これらの業務はもちろん大切なのですが、入社してすぐにそこに配属されるメンバーのモチベーションは低くなってしまいます。「問題無く動いてあたりまえ。問題があると責められる。」という仕事ですから。それに、そもそも自分が開発したアプリケーションでも無いし、お客様の業務も詳しくない。

だんだんと従業員の定着ややりがいを意識するようになってきました。

また、開発に配属となった者も、担当したお客様の要望通りアプリケーションを開発することが目的となって、1人のプログラマーではあるがMotionという会社の従業員である意義というか実感や所属意識のようなものが薄いという状況が続いていました。

 

—企業が継続し、成長してきたからこその課題と言えますね。

そうですね。成長という意味では特に、専門性による課題があります。人数が増えるに従って、例えば「企画・営業」と「設計・製造」など専門性ごとに役割を分けてきたのですが、役割を分離するとどうしても自分の責任範囲の中でしか働かなくなるというか、それを越えた仕事をすることにブレーキがかかってしまい、結果的に情報連携やコミュニケーションが不足してしまったり、経験や知識が不足してしまったりという状況になってきました。理想的には全員が全部できる、なのですがそれは無理なので、各役割間の糊代を埋められるような知識や意識を持つ人材育成の必要性を感じ始めました。

 

— そこで企業の存続や従業員の将来を意識した改革が始まったわけですね。

「私達の存在意義って何だろう?」を見つめ直そうと考えるようになりました。
「何故この会社があるんだろう。」「私達のミッションや存在意義って何だろうか。」
そこで、企業のミッションと行動規範を決めようという動きがスタートしました。

それと同時に、人事面での強化に着手し始めました。人材育成の強化と評価制度の見直しです。特に人材育成では2017年4月から社員全員、毎月1つセミナーを受けることにしました。毎回アンケートを提出してもらうようにし、意識や得られたことを確認するようにしています。それまでは、社員教育は新人研修とOJTくらいしかなかったので、これは画期的で試験的な取り組みです。

このような中で、ITIL®についての講演を聞き、戦略レベルから運用レベルまで全体を網羅したサービスマネジメントの考え方をまとめたフレームワークがあると知りました。私達の抱えている課題や取り組もうとしていることにちょうどマッチするのではないかと思い相談しました。

 

—ありがとうございます。研修で全てが解決するということはもちろん無いと思いますが、何か気付きや変化はありましたでしょうか。

反響はありましたね。技術中心で仕事をしてきたメンバーですが、マネジメントにも興味を持ち始めていましたので、今回のように体系的にマネジメントの話を聞くことができたのは非常に良い刺激になっているようで、若手の中には、研修が終わってすぐに、教えてもらったフレームワークや手法をインターネットで調べて関連書籍を購入するという行動に移した者もいました。

また、社長や役員であっても同じ身内だと言いにくい事柄を、第三者として指摘してもらえたことも非常にありがたかったです。会社の課題があっても「上(責任者)が変わらないと。上の責任でしょう。」という雰囲気になり、私達経営側も痛いところを突かれるのでそれ以上言い返せない状況になりがちでした。それを「上が変わらないと」ではなく「自分達が変わらないと」と意識が少し変わったように感じました。

 

—それは非常に嬉しいです!それもこれも、会社を一日休業にして「研修の日」にするという判断をされたからだと思います。あれは正直驚きで、武者震いしました。

ははは。この研修は絶対に全員に受けてもらわなくてはと思い、思い切って決断しました。前日までに主要顧客にも全て状況を説明し、電話にも出られない旨をご理解いただきました。
この研修が、自分達の存在意義を話し合うきっかけにしたいと思ったからです。当日は、私を始め役員も社員も一人残らず終日参加しました。

 

—狙い通り、きっかけ作りができたでしょうか。

はい。現状の課題を全員で洗い出して説明し合う、ということはなかなか普段できないことでした。その話し合いの中で、社員自ら、しかも参加したばかりのメンバーから「企業のミッションから見直そう。」という意見が出てきたのは非常に嬉しい流れでした。しかも、それ(企業のミッション)をみんなで考えようという動きが始まりました。

社員の意見を集め、キャッチコピーを考え、行動規範も作ってWebサイトのトップページへ掲載することになりました。

この活動は一言で言えば、「社員間のコミュニケーションを活性化させて一丸となろう」ということだったかもしれません。しかし、社員旅行や飲み会ではなく、研修をして、みんなから意見を集めて企業のミッションを考えるという活動を、なぜこのタイミングで実施するのか、を経営陣がその想いを説明して進めました。

そして実際に社員の意見を集計してみると、面白いことが見えてきました。
「社会性」や「未来」など、社会に貢献したいという想いを持ってこの会社で働いている、という意見が多かったのです。収入や就業環境などの条件ではありませんでした。また、「一発当てたい」といった野心的なものではありませんでした。

この結果は想定とは異なり驚きがあったと同時に、嬉しいものでもありました。改めて、みんなで企業のミッションが作れる、と思いました。

 

—ミッション作りは様々な苦労があったのではないですか。

そうですね、大変でした。他社のWebサイトをたくさん参考にし、研究しました。
タイミング的にちょうどOptamoキックオフ(2017年10月→2018年4月にサービスリリース)の時期だったので、良い意味で相乗効果が出たと感じています。

企業のミッションをみんなで考え、それを元にクレド(行動規範)を作るという進め方をしてきました。時間はかかりましたが、その行動規範を元に自分達企業の未来のために必要な人事コンピテンシーを作り、それを元に人事評価制度を見直していく・・・というように一歩一歩全員が納得しながらの組織改革を進めています。

例えば、これからもどんどん「優秀な人材を採用したい」と思っています。そのために、新しい働き方を模索していて、例えば、テレワークは1月よりテスト式に開始しています。「全員週一回はやっていいよ」というように、押しつけがましくない進め方をしています。

 

—トップダウンで命令するのではなく、「みんな一人一人が自分で考えて自分で行動する」という組織作りを目指されているのですね。

上杉氏: お客様ごとの受託開発だけではなく、今後は開発したアプリケーションをクラウドに乗せてのサービス提供を推進していきます。そうなるとこれ以上に「何のため、誰のためのサービスなのか」がわかりにくくなってくるだろうと考えています。

サービスのコンセプトを考えるには、その社会的背景や内的・外的要因を検討し、何のため・誰のためのサービスなのか、どのような価値を提供できるのか、をしっかり検討できなくてはいけません。ぶれない根拠があればこそ、サービス開発プロジェクトの成り立ちやサービスを提供する際の目指すところが誰にも明確になってぶれないと思うわけです。
その根幹となるのが企業のミッションであり、「みんなわかっているはず」ではなく、全員が意識しながら同じ方向を見て意見を出し合える組織にしていきたいと考えています。

 

—貴社のミッションの元となる「強み」を教えてください。

当社の強みは、「データ分析」です。しかも、「企画、デザイン、開発、分析、運用、分析を全て自社でやっている」というところがポイントです。

特に「組み合わせ最適化」という統計学の手法を使っており、技術に統計学をプラスし、お客様ごとにオーダーメイドの分析を提供しています。

 


組織変革の取り組みを支えてきたメンバーの一人、マーケティング担当X氏からもお話しを伺いました。(「自分は裏方に徹したい。」とのことで名前は伏せています。)

—企業のミッションを見直したいと思ったきっかけは何ですか?
X氏

実は、7月に入社したばかりなんです。
当初の私の仕事は「Webサイトのリニューアル」でした。何をしようとしている会社なのか、何が主力商品なのかわからないWebサイトでした。

 

実際、中に入ってみると、会社全体として何をしようとしている会社なのかがぼやっとしていてわからない、というのが正直な感想でした。受託開発でみんな忙しくしているのですが、それぞれがばらばらに仕事をしている、という状況でした。
「1つの方向に向いていこうよ!」とみんなに言いたい、という気持ちが日に日に強くなりました。使命感というのでしょうか。
自分の仕事はそれをまとめることだなと感じ始めたのがきっかけです。

 

特にこれからBtoCのビジネスを広げていくには、メディアを早急に立ち上げる必要がありました。しかし、メディアという意味で言えば、この会社にはディレクターがいませんでした。

 

事業戦略、目的、コンセプトなどのフレームワークを作り、マーケティングを展開するのがプロデューサー。
仕様に基づいて製品やサービス、そして企業ブランドを開発するのが製造。
それを販売するのがセールス。
プロデューサーは社長を始めとした役員、製造が技術者、セールスは営業です。

 

これらをつなげ、考えることについて指示を出すのがディレクターです。その部分を自分が補完できればと感じました。

—そのようなタイミングで弊社の研修があったわけですね。
X氏

はい。研修の内容が「自分達が何のために誰にどんなバリューを提供したいのか」を全員で考えるというもので、自分がしたいこととまさしく合致していました。

 

だからこそ、入社して数か月の自分が
「ミッションって作り直してもいいんでしょうか。」
という質問を社員全員の前でできたわけです。しかも、第三者である講師の方がその質問に対して軽くあっさり「いいでしょう!」と答えてくれた。

 

この一連のやりとりは、事前の調整など無かったのですが、その後の活動を進めるよいきっかけになったと思っています(笑)。

—確かに、「ミッションって創業者が決めるもので、変えてはいけないような気もするのですが…」と創業者のみなさんを目の前にしながら恐る恐る質問されていましたよね。
X氏

それはそうですよ。受け取り方によっては、雇い主を否定しているように思われるかもしれませんから。それに、講師の方の回答一つで全てが決まるという緊張感もありました(笑)。

しかしおかげで、その後の活動が進み始めました。

 

1人1人に自分の仕事の意味を考えさせることが重要だと思い、まずはアンケートを取りました。全員から「自分達の強み、弱み、足りない部分」を集めました。それらの意見をまとめ、もちろん、全員の意見を反映することはできませんが共通的な考え方を探し、創業メンバーの想いも入れながら、最終的に「組み合わせで業界No.1に」をキャッチコピーにしようということになりました。

 

これからはブランディングと商品・サービスのアピールをどんどん進めていきたいと考えています。

— 是非いちおしの商品・サービスをご紹介ください。
X氏

Optamo(オプタモ)とtogether(トゥゲザー)です。

 

Optamo(オプタモ)は、勤務シフトを多角的に分析し、最適な組み合わせをリアルタイムで提案するサービスです。
勤務シフトを決めたり組みなおしたりする活動は地味なのですが、属人的で想像以上に時間もストレスもかかる仕事です。特に、土日勤務や夜勤など嫌な役回りを人が決めるのはストレスがかかります。結果、文句を言わなさそうな人へシフトをあてがってしまいがちにもなります。こういった苦痛から人を開放するため、統計学を活用して自動的にシフトを計算し、シフトを考える人の精神的・肉体的ストレスを下げ、且つ、不公平感の無いシフト計画を立てるためのサービスです。

 

・・・というのが現時点のOptamoの紹介ですが、本当のところは、「Optamo」=「勤務シフトのためのサービス」で終わらせるつもりではありません。あくまでこれは第一弾だと考えて負います。このサービス名 “Optamo” の元は ”Optimization(最適化)”です。つまり、様々な事柄の「最適化」のブランドとしていきたい、という想いがあります。

 

ライドシェアのサービスであるtogetherとともに、どちらも「生活の利便性を上げていきたい」という想いから始めたサービスです。言い換えると、「人々の生活の裏に、統計学を目指したMotionが動いている」という世界を目指しています。

 

そして何よりも、「統計学って便利なんですよ。」ということを世の中に知ってもらいたい。それが私たちがこのMotionという会社で働いている理由です。

(みなさんで「OPTAMO」のパネルを囲んで)

お客様情報

■ 社名:株式会社 モーション
■ 所在地:東京都文京区湯島3-10-7 NOVビル4階
■ 設立年月日:平成11年4月2日
■ ウェブサイト:https://www.motion.co.jp/