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プロダクトオーナーはどのようにチームをリードするべき?押さえておきたい勘所~「Agile Japan 2022」イベントレポートその2~

2022年11月15日~16日、アジャイルに関心を持つあらゆる業種・職種の方が集まり交流を行うカンファレンス「Agile Japan 2022」が開催されました。

ITプレナーズは、本カンファレンスにSilverスポンサーとして参加。オンライン上で2つのミニセミナーを実施しました。それぞれの様子をレポートでお届けします!

2日目のセミナーは、意外と取り上げられることの少ないプロダクトオーナーという役割に注目し、「プロダクトオーナーが仕事をリードしていく勘所」と題して開催しました。

数々の新規事業立ち上げを手掛け、プロダクトオーナー(以下、PO)の支援経験が豊富な森雄哉さんと、アジャイルコーチの稲野和秀さんをゲストにお迎え。ITプレナーズ代表・岡本がファシリテーターとなって、PO本人やPOと共に仕事をする人が大切にしたいマインドセットやふるまいについて語り合いました!

「PO=調整役になってしまいがち」問題への対処法

セミナーでは、POが抱えがちな3つの課題について、どのように対処していけばいいかをテーマに、森さんと稲野さんからアドバイスをいただく形で進行しました。

話題に挙がった一つ目の課題は、「POが適切な権限を持っておらず、単なる調整役となってしまう」こと。組織体制や社内での人間関係なども大きく影響しているため、一朝一夕では解決しづらい問題ですが、POとしてどのような心構えが求められるのでしょうか。

森さんは「『開発したプロダクトを、どのようにして世の中に知ってもらうか?』という視点を持つことが不可欠」と語ります。そうでなければ、ソフトウェア開発はうまくいっても、実際の収益などビジネス面で思うような成果が出せずに終わってしまうかもしれません。

だからこそ、社内のメンバーなどすでに知っている人たちの間に入るのではなく、まだプロダクトを知らない「外の世界」にいる人たちに向けてコミュニケーションを取る必要があるのです。

森さん

世の中にさまざまなサービスが溢れている中、今の時代は、大企業であっても新製品を出したからと言って必ず注目されるとは限りません。プロダクトのリリース後は、メディアやユーザーに関心を持ってもらえるような活動をできるかにかかっています。つまり、自分ひとりではコントロールできない領域にチャレンジしていく必要があるのです。

ふってきた仕事をこなしているだけでも、一日が終わってしまっています。たくさんの仕事をした気にもなりますし、社内から評価されたりもします。でも、それだけやっていてもマズいということです。

プロダクトを成功させるためには、社内での調整役とはまったく異なる活動が求められます。メディアにとってニュースバリューのある情報を打ち出す、「これいいよ!」とユーザーが自発的に口コミをしてもらうための働きかけをする、などプロダクトを顧客に使ってもらえるように様々な働きかけをする必要があります。

POに必要なのは、「情熱」と「適切な自己開示」

POが調整役に留まってしまいがちな理由の一つに、「プロダクトに関わるステークホルダーが多すぎる」という要因があります。それゆえに、各所とのやり取りに奔走せざるを得ないPOも多いのではないでしょうか。POが抱えがちな課題の2つ目として、この状況に対してPOはどのように周りとコミュニケーションを取っていけばいいのか、3者で議論しました。

アジャイルコーチとして多数の開発現場を支援してきた稲野さんは、「まずは何よりも『情熱』が大事」と断言します。

稲野さん

たとえPOとして権限を持てていない状況でも、情熱が原動力となって物事が進む場面ってたくさんあります。プロダクトに対して情熱を持っているPOは、自然と「この状況で今できることは何だろう?」と考えるようになるからです。
さらにその姿勢が、スクラムマスターをはじめチームメンバーとの関係性にもいい影響を及ぼすと思います。

森さん

情熱は大事ですよね。プロダクトを広める際には、機能を淡々と説明するよりも開発にあたっての思いなども語れると、魅力がさらに伝わりやすくなります。とはいえ、冷静な性格の人には向いていないという話ではなく、「プロダクトにどういう印象を持ってもらいたいのか?」という顧客視点で、効果的なふるまいをしていきましょう。

続いて話題に挙がったのが、プロダクトの開発チームを率いていく中で「どういった組織の風土や文化があるとよいのか」という問いです。これに対して森さんは「そもそも、良い風土がなければPOが活躍できない、と考えているとなかなかうまくいかないと思います」と、ハッとするような投げかけをくれました。

森さん

組織風土や文化を他の誰かに変えてもらうことを待つよりも、自分から作っていく方がストレスも少なく結果的に実現が早くなると思います。いきなり組織全体の変革に取り組もうとしてしまっては大変ですから、自分一人からでも影響力をもてる個人やチーム内においてどういう文化が効果的なのかを考えながら、徐々に他部門やお客様に広げていけるといいと思いますよ。

この言葉に、稲野さんは「スクラムチームの各メンバーと、どういう関係性でいたいのか?」から考えていくのが重要だと話します。ですが、POがスクラムチームとどのように関わるかは、組織構造や体制、あるいはプロダクトの性質などによって最適解も変わってくるもの。

「ベストな答えはそのときの状況に応じて異なるため、見極めがとても難しい。私も、実際のところモヤモヤすることも多いんです」と打ち明けてくれました。

すると、「そうやって『モヤモヤしている』と自己開示できるのって素晴らしいです!」と森さん。感情も、情報の一つとしてチーム内で共有するとよいそうです。

森さん

特にPOやスクラムマスターは、「自分が答えを持っていなければならない」とプレッシャーを抱えることも多いのでは。そんなときこそ、周りを頼るのも一つの手です。チームに問いを投げかけて、皆から目指したい姿を引き出してみるのもいいですね。
その場をうまくやり過ごすことに慣れてしまってはいけない。重要な違和感を見逃してしまいかねません。

稲野さん

森さん、ありがとうございます。たしかに、今までチームを支援してきた中で、周りとうまく関係性を築けているPOは、まず自己開示をしてチーム内での共感を生んでいる場面が多いなと思います。

バックログは「それをすると誰が喜ぶのか?」から考えるべし

最後に、POとして抱えがちな「いいバックログが用意できない、スクラムチームのスキル底上げができない」という悩みについても一緒に考えました。

森さんが示してくれたヒントは、「そのバックログで誰が喜ぶのか、意図を言語化できることが肝心」というもの。

森さん

バックログの良し悪しも大切ですが、ビジネスとして利益につながること、お客様の課題解決につながることに集中してみましょう。また、スクラムチームのスキル装着ですが、「チームメンバーの働き方でギクシャクしているところはどこか」など、開発チーム内部にフォーカスしてみるのもいいと思います。
バックログの段階で価値をきちんと言語化できるのは、スクラムチームとして成熟している状態だと言えます。


森さん、稲野さん、たくさんのヒントとアドバイスをありがとうございました!

POは、1人で悩みを抱えやすい役割だと思います。そこから一歩を踏み出して、周りに力を借り、広い視野を持って物事を進めていくことで、ますます良いチーム・プロダクトが生まれるはずです。ITプレナーズでもPO向けのトレーニングを用意しておりますので、ぜひ必要なときにお手伝いをさせてください!