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これでわかる!ITIL® (Version 5) / New ITIL® 徹底解説:AI時代の最新フレームワーク

2026.6.15

ITサービスマネジメントのグローバルスタンダードとして広く知られるITIL®に、最新版「ITIL® (Version 5)」が登場しました。2026年1月末にPeopleCert社から最初の発表があり、それ以降、情報が順次公開されています。

AIの急速な進化やDXの加速によって、もはやITとビジネスは切り離せない時代になりました。この変化に対応するために、サービスマネジメントの在り方そのものもアップデートが求められています。そうした背景から進化を遂げたのが、今回登場した ITIL® (Version 5) です。本記事では、その概要から具体的な変更点、新しい資格体系、既存資格からの移行方法までをまとめてお伝えします。

※本記事の内容は、2026年6月10日時点の最新情報に基づいています。今後の公式発表にあわせて、内容を一部変更・追加する可能性がありますのでご了承ください。

1. ITIL® (Version 5) とは

ITIL® (Version 5) は、従来のITサービスマネジメント(ITSM)の枠組みを超え、デジタルプロダクトとサービスを統合して管理する「DPSM(デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント)」へと対象範囲を広げた最新のフレームワークです。さらに、構想段階からAIの活用とガバナンスを核に組み込んだ「AIネイティブ」なアプローチを採用しています。

Version 5は従来のITIL® 4を置き換えるものではなく、ITIL® 4で培われたプラクティスは受け継ぎつつ、デジタル・AI時代に合わせてアップグレードされた「進化版」という位置づけになっています。

2. 進化の背景:なぜ今、新バージョンが必要なのか?

ITIL® 4の登場以降、デジタルを取り巻く環境は激変しました。今回のバージョンアップの根底には、主に4つの市場ニーズの変化や技術の進歩があります。

生成AIの爆発的普及と技術環境の激変

ITIL® 4策定時(2019年)の想定を遥かに超えるスピードで生成AIや自動化技術が進化しました。IT運用やビジネスモデルそのものの変革が進み、具体的な活用事例も急速に蓄積され始めています。

「プロダクト」と「サービス」、「開発」と「運用」の境界線の消失

現代のデジタルビジネスにおいて、これらを別物として切り離して管理することは限界を迎えています。すべてを密接に一体化させ、スピード感を持って最適化したいという市場ニーズが強まりました。

「体験(エクスペリエンス)」が企業の競争力を左右する時代の到来

単なるシステムの安定稼働やSLAの達成だけでは、ビジネスの成功を担保できなくなりました。デジタルサービスから日常的に顧客が得るCX(Customer Experience:顧客体験)や従業員が得るEX(Employee Experience:従業員体験)といった「体験の質」が、成果に直結する重要因子として重視されています。

DXの高度化に伴う「組織全体の構造的変革」への要求

個々のプロセス改善(部分最適)だけでは、激しい変化のスピードに追いつけなくなっています。自社の組織全体のケイパビリティを客観的に評価し、段階的に引き上げるための世界共通の基準が強く求められるようになりました。

3. 進化した点:ITSMからDPSMへ

Version 5ではさまざまな変更が加えられていますが、特に注目すべきポイントは以下の通りです。

ITSMから「DPSM(デジタルプロダクトおよびサービスマネジメント)」への進化

従来のITサービスマネジメント(ITSM)の枠組みを超え、デジタル製品(プロダクト)とサービスをライフサイクル全体で一体管理する「DPSM」へと概念が大きく拡張されました。

AIと自動化を前提とした「AIネイティブ」な内容の追加

生成AIの活用やガバナンスなど、AI時代のモダンな運用手法や独自のケイパビリティモデルがフレームワークの根幹に組み込まれました。また、Version 5の各所にAIに関する内容が加味されています。

「体験(エクスペリエンス)」が価値の基本基準のひとつに

単なるシステムの安定稼働やSLAの達成にとどまらず、日常的に顧客が得るCXと従業員が得るEXの両方において「デジタル体験の質」を測定・向上させることが、サービス価値を評価する重要な基準として定義されました。

「成熟度」を軸とした組織変革フレームワークの確立

組織全体の能力(成熟度)を客観的にアセスメントし、段階的かつ構造的にトランスフォーメーションを推進するための評価基準やアプローチが新たに追加されました。

「プロダクト」「サービス」「エクスペリエンス」に直結した新資格の誕生

資格体系が実務の役割に合わせて大幅に再構成され、自身の専門分野やキャリアパスに合わせて学べるように「ITIL® プロダクト」「ITIL® サービス」「ITIL® エクスペリエンス」が新設されました。

4. 新しい資格体系:役割に直結したシンプルな構造

Version 5の資格体系は、現代の組織の役割(ロール)に合わせてシンプルに整理されました。

コアモジュール

  • ITIL® ファンデーション:すべての認定称号を取得するためのベースとなる必須モジュールです。デジタルプロダクトやサービスの管理のための統一ライフサイクルなど、基礎となる共通言語やコンセプトを学びます。
  • ITIL® Monitor, Support and Fulfill (MSF):サービスデスク、インシデント管理、問題管理、サービス要求管理、モニタリングとイベント管理、5つのプラクティスについて学ぶ専門モジュールです。
  • ITIL® Plan, Implement and Control (PIC):変更実現、展開管理、リリース管理、サービス構成管理、IT資産管理、の5つのプラクティスについて学ぶ専門モジュールです。
  • ITIL® Collaborate, Assure and Improve (CAI):関係管理、サプライヤ管理、サービスレベル管理、継続的改善、情報セキュリティ管理、の5つのプラクティスについて学ぶ専門モジュールです。
  • ITIL® プロダクト:デジタルプロダクトを統合的なバリューストリームとして捉え、ライフサイクル全体を通じた価値提供の方法を学びます。
  • ITIL® サービス:レジリエンスが高く、高パフォーマンスなデジタルサービスの提供・改善を通じて、測定可能な顧客成果の実現を目指します。
  • ITIL® エクスペリエンス:デジタルプロダクトとサービスに人間中心のデザインを組み込み、信頼と価値をエンドツーエンドで整合させる方法を学びます。
  • ITIL® ストラテジー:テクノロジー・投資・実行をビジネス戦略と結びつけ、複雑なAI時代において測定可能な成果を生み出す実践的な手法を学びます。
  • ITIL® トランスフォーメーション:ガバナンス・実行・継続的な学習のバランスをとりながら、組織全体の変革を構造的に推進するための実践的なガイダンスを学びます。どの上位の認定称号を目指す場合でも必須となります。前提条件はITIL® ファンデーションを修了していることだけなので、ファンデーション合格後すぐに受講することもできます。

認定称号

上記の認定資格を複数取得することで、以下の称号が付与されます。

  • ITIL® プラクティスマネージャー (PM):ITIL® ファンデーション + MSF、PIC、CAIのいずれか1つ + ITIL® トランスフォーメーション
  • ITIL® マネージングプロフェッショナル (MP):ITIL® ファンデーション + プロダクト + サービス + エクスペリエンス + ITIL® トランスフォーメーション
  • ITIL® ストラテジックリーダー (SL)ITIL® ファンデーション + ストラテジー + ITIL® トランスフォーメーション
  • ITIL® マスター:上記3つの称号(PM、MP、SL)をすべて修了することで付与される最高位の称号です。

拡張モジュール

  • ITIL® AIガバナンス:AIの倫理的かつ責任ある導入を学ぶ、独立した拡張モジュールです(事前要件はありません)。

5. 日本語版・英語版のリリース状況とITIL® 4の今後

日本語版リリース状況

2026年5月15日、「ITIL® ファンデーション (Version 5)」および「ITIL® ファンデーションブリッジ(Version 5)」の日本語試験が提供開始されました。その他の上位モジュールの日本語版については、2026年8月以降順次リリースが予定されています。

英語版リリース状況

ITIL® ファンデーション (Version 5):2026年2月リリース済。
ITIL® プロダクト、サービス、エクスペリエンス:2026年3月リリース済。
ITIL® ストラテジー、トランスフォーメーション:2026年4月リリース済。
ITIL® マネージングプロフェッショナルトランジション:2026年5月リリース済。
ITIL® AIガバナンス:今後リリース予定。

ITIL® 4の今後

現行のITIL® 4は、2027年12月まで提供が継続されます。

6. 既存資格からの移行方法

すでにITIL® 4などの資格をお持ちの方は、これまでの資格を活かした移行パスが用意されています。

※「ITIL® マネージングプロフェッショナルトランジション(MPT)」コースには、「ITIL® マネージングプロフェッショナルトランジション(MPT)」試験と「ITIL® トランスフォーメーション」試験の、2つの必須試験が含まれています。

ITIL® 4 ファンデーション保持者

Version 5の上位モジュールを受講するための前提条件として、そのまま有効です。主な変更点だけを1日で学べる「ブリッジ研修」も用意されています。

ITIL® 4 マネージングプロフェッショナル (MP) 保持者

「ITIL® マネージングプロフェッショナルトランジション(MPT)」コースを受講・合格することで、Version 5の「ITIL® マネージングプロフェッショナル (MP)」へ移行できます。

ITIL® 4 ストラテジックリーダー (SL) / プラクティスマネージャー (PM) 保持者

新設の「ITIL® トランスフォーメーション」コースを受講・合格することで、Version 5の各称号へ移行が可能です。

ITIL® 4 マスター保持者

「ITIL® マネージングプロフェッショナルトランジション(MPT)」コースを受講・合格することで、「ITIL® マスター (Version 5)」へ移行できます。

ITIL® v3 以前の保持者

v3からVersion 5ではフレームワークの内容が大きく進化・変化しているため、公式としては「ITIL® ファンデーション (Version 5)」からの学び直しが強く推奨されています。ただし、ITIL® v3 マスター保持者およびITIL® v3 エキスパート保持者は「ITIL® マネージングプロフェッショナルトランジション(MPT)」コースを受講・合格することでVersion 5の「ITIL® マネージングプロフェッショナル (MP)」へ移行できます。

7. 名称の注意点

今回のアップデートに伴い、正式名称にも注意が必要です。正しい表記は「ITIL® (Version 5)」または「New ITIL®」で、「ITIL 5」「ITIL v5」のように略すことは公式には認められていません。「Version」を含めた表記を使うようにしましょう。

8. 今後の学びはどうすべきか(2026年度の学習戦略)

日本語版の完全なリリースにはまだ時間がかかりますが、ビジネスの進化は止まりません。ITプレナーズでは、「待つ」のではなく「進めながら移行する」戦略を強く推奨しています。
まずは現行のITIL® 4を活用して組織内の共通言語化・成熟度向上を進め、日本語版リリース後に差分を学習してVersion 5へ進化(移行)するアプローチが、最も効率的であり、確実な選択と言えるでしょう。

9. 関連コンテンツ

ITIL® (Version 5)についてさらに深く知りたい方は、ITプレナーズYouTubeチャンネルの動画もご活用ください。

10. お問い合わせ・人材育成のご相談

ITIL® (Version 5) への移行準備や、一社研修やeラーニング人材育成について気になる点がございましたら、ぜひお気軽にITプレナーズまでご相談ください。

ITIL® is a registered trademark of the PeopleCert group. Used under licence from PeopleCert. All rights reserved.