事例紹介

DXの基本を学んで業務フローの整理から始める、草の根DXプロジェクトの試み

株式会社不二ビルサービス様
研修事例
2021.12.23

変化の速い時代に、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進の重要性が高まっています。しかし「DXを始めるにあたって、何から手を付けて良いのか分からない」という悩みも多く聞かれます。

「DX推進 基礎講座 ~業務の視点から考える~」は、多くの方が悩まれているDX推進の第一歩となるように設計された、異業種参加型のオンライン講座です。2021年9月から11月にかけて実施された本プログラムの第1回開催には、様々な企業から20名の受講者にご参加いただきました。

今回、本プログラムへ3名が参加された株式会社不二ビルサービスでは、講座で学んだVSM(Value Stream Mapping)を受講後に早速社内で3回実践し、業務フローの整理に役立てました。受講者である常務取締役 社長室長 ケア事業本部長 中嶋博志さんと、総務部総務課 担当課長 井上由香さんに、講座参加の背景や感想、その後の成果について詳しくお話をうかがいました。


社内にIT専門家が少ない中で始める、草の根DXプロジェクト

貴社の事業内容をお聞かせください。
中嶋さん

株式会社不二ビルサービスは、広島・東京を拠点として、全国各地の2,000棟超の建築物を受託管理し、商業施設やビル等の設備管理、駐車場管理、清掃業務、警備業務などを行っています。他には介護事業も展開しています。また、近年はベトナムにおいても建物総合管理のビジネスを広げています。

皆様それぞれの業務内容をお聞かせください。
中嶋さん

建物総合管理事業では各部署のまとめ役をしており、介護事業については責任者をしています。また、ベトナムの現地法人も担当しています。社内のDX推進プロジェクトも、中心となって進めています。

井上さん

ウェブサイトやネットワーク、サーバー管理などのシステム関係の責任者をしており、総務業務も兼任しています。社内のDX推進プロジェクトにも携わっています。

「DX推進 基礎講座」を知った経緯と、どのような課題を解決するために参加を決めたかお聞かせください。
中嶋さん

向研会(Aoba-BBTが提供する大前研一主宰の企業経営者ネットワーク)に参加している当社の会長からの紹介で「DX推進 基礎講座」を知りました。ちょうど、当社もDXに取り組まなければいけないというトップからの指示もあり、社内で「草の根DXプロジェクト」を立ち上げたところでした。

事業規模に対してITの専門家が少ない中で、どうやってDXに取り組んでいくかという課題はプロジェクトを立ち上げた当初からあリました。そこで、始めるにあたって基礎的なことから学んでみようと、プロジェクトのメンバーから3名が今回の講座を受講することにしました。受講したのは責任者である私と、他にはITに詳しい井上さん、もう1名は現場に詳しいメンバーです。

異業種交流やシミュレーションで気付きを得られるワークショップ

「DX推進 基礎講座」の感想や、良かった点についてお聞かせください。
中嶋さん

「DX推進 基礎講座」は、eLearningによるインプットだけでなく、オンラインでテキストディスカッションができるアウトプットの機会もあり、学んだことが身につきやすいと思いました。プラットフォームを通して、他の受講者とコミュニケーションしやすい環境があったのも良かったです。

オンラインで行われたVSMのワークショップでは、うまく意見が言えず、自分の中で消化不良の部分もありました。しかし、そのあと実際に社内でVSMを実施した時は、研修中の失敗を糧にして、イニシアチブを持って進めることができました。失敗しても問題がない研修の場が良いシミュレーションになったと思います。

井上さん

異業種参加型で、様々な職種の方が参加されていた点が良かったです。社内にIT担当者が少ないため普段はなかなかアドバイスをもらう機会がないのですが、社外の方とのディスカッションを通していろいろな気付きがありました。

eLearningはスマートフォンにも対応していて、朝の電車の中でも手軽に見られました。操作も簡単で、もう一回聞きたいと思ったところもすぐに戻って見られるので便利でした。

VSMのワークショップは、業務フローを可視化するのに良いと思いました。今後、システム設計の際にも役立ちそうです。

受講後すぐにVSMを社内で3回実施し、業務フローを整理

今回参加した研修によって、どのような成果や行動変容が生まれていますか?
中嶋さん

社内の「草の根DXプロジェクト」では、手始めに勤怠管理が抱えている課題について取り組んでいます。全国に大小様々な規模の現場があり、どういう形で勤怠管理をしていくかが継続的な課題となっていたため、そこにデジタル技術を活用したいという狙いがありました。「DX推進 基礎講座」参加後、すで社内でVSMを3回にわたって実施し、課題となっていた勤怠管理についての業務フローを整理できました。

井上さん

最初は「VSMは1回で終わらせる」という勢いで進めようとしていたのですが、研修事務局の方からフォローアップでアドバイスをいただき、「なにがなんでも1回で終わらせる」のではなく「ちょっとだけ進む」という進め方に方向転換しました。それが良かったと思います。1回実施してみると、「次回は○○さんを呼んだ方がいいね」「私より○○さんが詳しい」などの意見もメンバーから出てきて、結果的に多くの人がVSMに関わりました。

VSMを実施してから、初めての給与計算が先日終わったのですが、これまで何度言ってもなかなか提出されなかった勤怠データが今回は各部署から早めに提出された、という嬉しい変化がありました。多くの部署を巻き込んでVSMを実施したことで、業務フロー全体を知ってもらえて、意識が変わったのを感じています。

中嶋さん

他にも、VSMのために集まって他の部門と話すことで、フローの無駄に気付いたり、困っていることについてのアドバイスをもらう機会にもなりました。同じ会社でも部門内の交流がなかったので、それぞれが自分たちのプロセスを見直す良い機会となったと思います。

今後の期待や、展望についてお聞かせください。
井上さん

VSMを通して業務フローの無駄な点などは把握できましたが、DXはまだまだこれからです。我々のように形のないサービスを提供する場合のDX先進事例などを学んで、どのように続けていくかを考えつつ、進めていきたいです。

新しいシステムを導入する場合、システム先導で進めてしまうと、変化に対してみんなの気持ちがついてこれず、ネガティブな反応が多くなってしまうことがあります。
VSMでは多くの人を巻き込むことによって「みんなで一緒に変わっていこう」というムードになれたという手ごたえがありました。今後、新しくシステムを入れるときにも同様に、いろいろな人を巻き込んで、変化に対して柔軟な空気を作っていきたいと思います。

中嶋さん

DX推進には、熱意を持って数年かけてやっていく覚悟が必要です。その取り組みの中で、今回のような講座で新しい手法を学んだり、社外の方から刺激を受けたり、インプットをしてから現場でアウトプットすることは重要と考えています。Aoba-BBTさんには今後もフォローアップや、似た業界の事例から学べるような講座も期待しています。

「草の根DXプロジェクト」がまず勤怠管理の部分に取り組んだのは、我々が建物総合管理や介護といった、人がいないと成り立たない労働集約型の産業であるためです。
しかし、これからの時代は「人がいないと成り立たない」の部分も大きく変わっていかなくてはいけないと考えています。建物管理も介護といった事業自体はこれからも必要とされますが、現在のビジネススタイルのままだと、限界が来て淘汰される可能性もあります。AIやロボットの活用などは、我々の業界ではずっと言われていることではありますが、なかなか進んでいないのが実情です。今回のDX推進を機に、今後も変革を目指して取り組んでいきたいと思います。


お客様情報

社名  株式会社不二ビルサービス
創立  昭和33年4月24日
資本金 2,030万円
従業員数 3,655人 ※広島本社・東京本社 計
本社 広島本社 広島市西区楠木町四丁目8番12号
東京本社 東京都千代田区鍛冶町1丁目5番7号 江原ビル
ウェブサイト https://www.fujibiru.co.jp/

DX推進 基礎講座 ~業務の視点から考える~

開催方法:オンラインライブ研修(Zoom)、e-Learning、テキストディスカッション
参加者定員:24名 ※最小催行人数12名 ※一社複数名を推奨(最大6名迄/社)
参加費:8.8万円(税込)


※取材は2021年11月に実施しました。
ライター:Nanami Hirokawa