事例紹介

アジャイルの考えを取り入れ、ユーザーへ真の価値提供ができるDX組織へ

株式会社プレナス様
研修事例
2022.3.17

「はじめに消費者ありき」の創業精神を掲げ、『ほっともっと』『やよい軒』など国内外で3,000店舗を超える飲食店を運営する株式会社プレナス。消費者により良い商品とサービスを届けるにあたって、従来の業務の進め方やテクノロジーの利活用の仕方などにさまざまな課題を抱えていました。

そこで、まずはDX本部のメンバー全員のチームビルディングを兼ねた「フェニックスプロジェクト DevOpsシミュレーション研修」(以下、DevOpsシミュレーション研修)、共通言語を獲得し同じ目線で目標に向かって進んでいくために「EXIN Agile Scrumファンデーション研修」(以下、Agile Scrumファンデーション研修)を学びました。研修導入の狙いや現場で得た学び・変容について、DX本部の漆さん、研修を受講された服部さん、清田さんに話を聞きました。


「請負構造型」のシステム開発体制から脱却を

―皆様の業務内容をお聞かせください。
漆さん

社内システムを運用・開発する部門の部長を務めています。2021年夏ごろから、当部門が所属するDX本部全体で、組織間の壁を取り払い、業務プロセスを見直そうという動きが生まれました。現在はその活動を取りまとめており、3つの部署を横断した人材育成と仕組みづくりの役割も行っています。

服部さん

もともと福岡拠点でユーザー・社員・店舗が使用するパソコンのキッティングや問い合わせの対応をメインで行っておりました。東京へ異動後は、アジャイル・スクラムの考え方をベースとして、各営業部門に対して業務改善の支援を担当しています。

清田さん

私は、社内システムの開発をメインで担当しております。主に手がけているのは、店舗で使用する食材の発注システムや請求関係のシステムなどです。

―研修を受講する前に、組織上で感じていた課題はどんなものでしたか?
漆さん

当社では、請負構造型のシステム開発体制が常態化していました。ゼロから要件定義をかっちりと決めて着手するものの、要望通りに実装したはずの機能が店舗側から「使いづらい」と言われてしまったり、システム自体の動作が遅くなってしまったり。あれこれ仕様を変えていくうちに、3ヶ月間の計画が半年に伸びるというような状態によく陥っていたんです。

 

どんなに開発側が一生懸命考えて作っても、ユーザーにとって価値がなければ意味がありません。そのため、要望をそのまま請け負うのではなく、まずはシステムを小さく作って、現場の意見を取り入れながら改良していく形に変えたほうがよいだろうと考えたのです。今までのウォーターフォール型の進め方からアジャイル開発にシフトするため、今回の研修実施を決めました。

―ITプレナーズの研修にどのようなことを期待していましたか?
漆さん

外の世界から新たな気づきや学びを得てもらうことが最大の狙いでした。内部だけではなかなか業務の進め方を変えられず、開発側も長年悩んできましたから。ただ、現場にイノベーションを起こすためには、知識を詰め込むだけでは不十分だろうとも考えていました。

 

そんな中でITプレナーズの研修は、アウトプットや演習の要素も多分に含まれており、より実践的な学びの場になりそうな点が導入の決め手でした。組織に変革をもたらす着火剤になってほしい。そんな期待を込めて受講者の24名を送り出しました。

研修を通じて、チームで協働する重要性を体感

―「DevOpsシミュレーション研修」および「Agile Scrumファンデーション研修」を受講した感想をお聞かせください。
服部さん

DevOpsシミュレーション研修では、参加者ごとに異なる役割が与えられます。研修内でさまざまな課題が発生する中、違う立場同士が協力して目標達成するためには、自分ひとりで問題に対処しようとしてもなかなかうまくいきません。

 

そこで痛感したのは、自分から情報を発信したり取りに行ったりすることの大切さです。課題を解決するためにはチーム間で適切に情報を共有し、協働していかなければならないのだと学びました。

清田さん

自分の担当タスクが先に終わってもただ他のメンバーの完了を待つのではなく、負荷がかかっているところに早めにフォローを入れるなど、全体最適で協力していく必要があるなと感じました。ゲーム要素を含んでいて、内容もすんなりと入ってきたので参加しやすかったです。

―研修で、印象に残っている場面や学びはありますか?
服部さん

Agile Scrumファンデーション研修で講師の方がおっしゃっていた、「許可を求めるな謝罪せよ」というアジャイルスクラムにおける格言が印象に残っています。許可を求める前にまずは行動してみて、失敗してしまったら周りの人たちに謝ろう、という意味です。当社にこれまでない考え方でハッとさせられました。

清田さん

どちらの研修でも言われたのが、端的に言うと「仕掛かりに意味はない」という意味の内容です。システムを使う人に価値を感じてもらえなければ、どんなに努力したとしても何もないのと同じなのだと。日々の業務で意識したい言葉だと感じました。

社内のDX化を推進し、成果の出せるアウトプットを目指して

―研修での学びは、現場の業務においてどのように役に立っていますか?
服部さん

計画の立て方が2つの点で変わりました。1つ目は、全てを決め切ってから進めるのではなく、「小さく作って出す」意識が芽生えたことです。今までは、あれもしなければいけない、これもしなければいけない…と盛り込みすぎて、どんどん工数が増えてしまいがちでした。

2つ目は、実際に計画を立てる際に「このアウトプットはどんな成果につながるのか?」をきちんと考えるようになったことです。まだうまくできない部分もありますが、少しずつアジャイルの考え方を業務に取り入れようと試行錯誤しています。

清田さん

私も、学んだフレームワークを実際の業務に当てはめる難しさを感じています。今後、社内の他部署や外部パートナーの方とも協働していくために、業務の進め方やリソースの割り振りを見直しているところです。

―今後の展望をお聞かせください。
漆さん

まずは、ユーザーに価値提供ができる開発組織になるという当初の目的を達成したいと思います。言われたからやるのではなく、他部署やあらゆる関係者と対等かつフラットなコミュニケーションを取りながら、価値のあるシステムを生み出していきたいですね。目指すは、「このテクノロジーを取り入れれば、さらに店舗の利益が伸びるのでは」と積極的に提案していけるような、時代を先取るシステム開発組織です。

当社はコロナ禍により各店舗の売上が大きく落ち込む中、中食事業に注力することで厳しい時期を乗り越えてきました。ここからは事業を飛躍させるタイミングだと捉えています。売上や生産性を高めていくためには、デジタルのさらなる活用が必要不可欠です。社内のDX化を推進して、業務プロセスを変更したり、新しいサービスを提供したり、それらをデータで連携してデジタルエコシステムを構築したりと、どんどん手を打っていきたいと考えています。

現在、DX本部には24名の社員がいます。その中で、プロダクトオーナーやスクラムマスターを任せられる人材を育てることができれば、私たちは関係者からますます頼られる開発部門になれるのではないでしょうか。また、業務改革の成功事例を社内で横展開することで会社全体としても強くなれるはずです。新たな社風が生まれ、社員の働き方も変わる。今後2年ぐらいで、そのゴールに到達したいと考えています。

担当講師からひとこと

稲野 和秀講師
「EXIN Agile Scrumファンデーション研修」担当

まさにこれから変革を起こさんとする皆さんが揃い、非常に熱量のある研修になったと思います。開始当初こそ慣れない用語に対して戸惑われていた様子でしたが、研修を通じて「どうしたらもっと良くなるか」を考え動く前向きな姿勢が印象的でした。

「適度なタイミングでおさらいの時間が欲しい」「話を聞くだけではなく自分たちで考えて理解する時間がほしい」と積極的なフィードバックをいただき、有意義な場を共に創ることができたと感じます。

また、学びを実践する際に起こりそうな疑問や他社事例に関するさまざまな質問もたくさんいただきました。その意気込みを受けて、講師としてもこれまでの現場支援の経験から伝えられることは全てお答えしようと奮起させられましたね。もちろん、私の回答がそのまま皆さんにとっての正解になるとは限りませんが、少しでも実践に活かせるよう、教科書的な知識に留まらず率直にお話しさせていただきました。

研修終盤で行った、スクラムのエッセンスを体感するワークショップにおいては、オンラインでありながらもチームとしてのコラボレーションを強く感じられたことはとても印象的でしたし、嬉しく思います。この体験が皆さんの変革への一助となれば幸いです。

高江洲 睦講師
「フェニックスプロジェクト DevOpsシミュレーション研修」メイン講師および
「EXIN Agile Scrumファンデーション研修」サブ講師担当

DevOpsシミュレーション研修は、4ラウンドからなるゲーム形式の研修。ゲームを通してDevOpsを体感しつつ、各ラウンド間でのちょっとした座学や振り返りによって学びを深めていただきます。1日あたり12名ずつ、2日に分けて行いました。同じ組織環境・文化をベースとし、どちらも熱量が高くそれぞれに特色のある内容になったと思います。

1日目の組は、最初の方はリーダーシップを取るメンバーによって動いている印象で、相談し合う様子はあまり見られませんでした。しかし、比較的早い段階で各役割の見える化が進み、情報共有も盛んに行われるように。最終的に、ゲームの2つの目標のうち1つを達成できました。

2日目の組は、序盤はかなりおとなしく、情報共有もままならない様子でした。ところが(全4ラウンドのうち)2ラウンド目から盛り上がりを見せ、コミュニケーションが劇的に増え始めたのです。優先順位付けや役割を超えた協働を早い段階から意識する様子がうかがえました。残念ながら(コミュニケーションの質も含めた)品質問題への取り組みが遅れたため、ゲームの2つの目標どちらも達成できませんでしたが、私の知るDevOps研修の中でも過去一番の盛り上がりとなったように思います。

どちらの組にも共通して言えるのが、研修の評価がゲームの結果に関わらず高いということです。講師の用意した陥りがちな罠にハマってしまいつつも、一体となって課題に気づき、学び、乗り越えていく。そんなチームとして一段ずつ高まっていくプロセスを体感できるからでしょう。この体験を通して参加者の方々の行動が変わり、組織が変革するきっかけとなることを期待しています。


お客様情報

社名  株式会社プレナス
創立  昭和35年3月
資本金 34億61百万円
従業員数 社員 1,209名 臨時従業員 5,312名
ウェブサイト https://www.plenus.co.jp/

EXIN Agile Scrumファンデーション

ITプロフェッショナルがアジャイル手法とスクラムプラクティスの知識を修得できる2日間のコースです。

本コースでは、一般的な「アジャイルフレームワーク」に関する箇所と、「スクラム」の箇所に特定して、それらの利点とプラクティスについて学習します。学習トピックの中には、顧客の設定した達成目標を実現するために、チームメンバとアジャイル方式で取り組む方法も含まれています。また、部門間の協力や自己管理チーム、各イテレーションやスプリントで成果物を出すプラクティスについても学習します。

2日目の最後には認定試験を実施し、合格すると認定試験機関EXIN社が提供している認定資格「EXIN Agile Scrumファンデーション」が得られます。プロフェッショナルとして活躍する方の、アジャイルとスクラムの複合知識を確認できる認定資格です。

フェニックスプロジェクト DevOpsシミュレーション研修

DevOpsの原則を適用し、多大な改善と事業価値を達成するために課題やチャレンジに立ち向かう組織を描いた革新的な書籍 「The Phoenix Project」(Gene Kim、Kevin Behr、George Spafford著)をベースに構成されており、 参加者自らが書籍の流れを体験し、どのようにDevOpsを実務環境に適用するかを実践的に学ぶことが可能です。
本コースは、国際的なDevOpsおよびAgileの認定機関である、DASAのコンピテンシーモデルに基づいた設計になっています。


※取材は2022年2月に実施しました。
ライター:Yui Murao