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参加者150名が交流!日本のアジャイル・スクラムを共に考える「Scrum Sunrise」イベントレポート

ITプレナーズは2023年11月10日、Scrum.org™が提唱する「Professional Scrum」の価値や意義を語り、日本におけるアジャイル・スクラムのあり方を共に考える招待制イベント「Scrum Sunrise」をScrum.org™社・Optilearn社との3社で開催しました。本レポートでは当日行われたセッションの内容を紹介します。

「Scrum Sunrise」について

近年、開発だけでなくあらゆるビジネスの現場で、よりスピーディに高い価値を生み出すアジャイル・スクラムの手法が注目されています。一方で、導入や実践がうまくいかず課題を抱える企業も少なくありません。

「Scrum Sunrise」は、Scrum.org™が提唱する「Professional Scrum」の考えや成功事例をお伝えすることで、日本におけるアジャイル・スクラム実践の活性化につなげたいという思いから、企画されたイベントです。

Scrum.org™のCEOであるデイヴ・ウェスト氏をはじめ、スクラム経験豊富なスクラムマスター、アジャイルコーチ、またScrum.org™の認定資格取得者であるプロフェッショナルスクラムトレーナーが集い、トークセッションやパネルディスカッションを実施。セッション後は、スクラムに関心のある約150名の参加者が集まって交流パーティーも行いました。

【イベントURL】https://www.itpreneurs.co.jp/event/20231110scrumsunrise/

各セッション・ネットワーキングパーティーの概要

各スピーカーの講演内容の概要とスライドをご紹介します。

 

Scrum.org™CEO デイヴ・ウェスト氏 講演「スクラムの現状~デジタル時代に価値を届ける~」

Scrum.org™CEO デイヴ・ウェスト氏からは、現代社会においてスクラムをどのように実践すべきかについてお話しいただきました。

「急速にデジタル化する社会で、企業における事業開発のあり方や、人々の働き方も大きく変わりました。その中で、スクラムの手法が注目されています。しかし、国内外のスクラム実践者に話を聞くと、現場では納期に合わせて仕上げる『プロジェクト思考』の意識が強く、顧客への価値提供が置き去りにされてしまうケースも少なくないようです。結果として、スクラムの手法を用いたにもかかわらず、エンドユーザーへのリリースが年に1〜2回しか行われなかった、ということにもなるでしょう。つまり、その状態はスクラムではなく“Water-Scrum-Fall”になってしまっているのです。

自分たちが手がける仕事はどのような価値を生み出しているのか。顧客価値とビジネス成果をアラインさせ、自分たちの業務が顧客にどのような意味をもたらすかに焦点を当てることが、Professional Scrum実践のポイントです。

最後にお伝えしたいのは、アジャイルやスクラムは、ワクチンではないということです。一度打っておけば安心な特効薬ではなく、継続的な取り組みが不可欠となります。組織の状態をしっかりと見つめ、チームメンバーがお互いに思いやりを持って仕事に臨む環境を作ることが大切です。すべてを完璧にこなすことは難しいですが、少しずつできることを増やしていくとよいでしょう」

講演スライド:https://speakerdeck.com/itpreneurs/20231110scrumsunrise-dave-west

 

サーバントワークス株式会社 代表取締役 長沢智治氏 講演「ユーザーと実践者の立場で語るProfessional Scrum」

「Scrum.org™との出会いは20年前」と語る長沢氏に、Scrum.org™が提供するトレーニング・認定資格の特徴や、コミュニティの活用方法、スクラム実践に役立つ翻訳記事についてお話しいただきました。

「多くの認定資格を取得してきた立場から見る、Scrum.org™の特徴を4点紹介します。

(1)スクラムマスターや開発者向けだけでなく、マネジメントやUXへの実践的な認定資格も提供
(2)トレーニングの受講は必須ではなく、認定資格試験のみの受験も可能
(3)スクラム実践における目指すべきコンピテンシーが明確になっており、学習パスが整備されている
(4)Professional Scrum Trainer(認定講師)と交流できるコミュニティが提供されている

日頃、アジャイルコーチとして数々の企業を支援する中で、スクラムを推進するためには、組織/チーム/個人をバランス良く育成することが重要だと感じます。とくに、個人とチームが活躍できるように『環境面を育成する』、という考えも持つとよいでしょう。社内コミュニティをつくり仲間とともに取り組むことで、スクラム実践のより強い推進力が得られるはずです」

講演スライド:https://www.servantworks.co.jp/posts/scrumsunrise-2023-talking-about-professional-scrum-as-a-user/

 

株式会社yamaneco 小林絵美氏 講演

スクラムマスター・アジャイルコーチとして企業のプロダクト開発を支援する小林氏より、国内企業における支援事例が紹介されました。(講演内容およびスライドは参加者限定となります)

 

パネルディスカッション

【スピーカー】
株式会社Aoba-BBTシステム開発本部本部長/株式会社ITプレナーズジャパンアジアパシフィック 取締役・原秀文氏
合同会社アゴラックス 代表取締役・グレゴリー・フォンテーヌ氏
Scrum.org™ CEO・デイヴ・ウェスト氏
サーバントワークス株式会社 代表取締役・長沢 智治氏

スピーカーの4名が、スクラムマスター、アジャイルコーチ、Scrum.org™トップ、それぞれの視点から「スクラムマスターとマネージャ(管理職)の違いや関係について」「プロダクトオーナーシップが重要な理由」など、アジャイル実践のポイントについて語り合いました。

 

合同会社アゴラックス 代表取締役 グレゴリー・フォンテーヌ氏 講演「日本におけるアジャイル開発:現状と今後の期待」

プロフェッショナル・スクラム・トレーナー(PST)として唯一の日本語話者である(2024年1月現在)グレゴリー氏からは、日本におけるアジャイルの現状と今後の展望についてお話しいただきました。

「日本企業は、どれだけアジリティ(柔軟性)を持っていると言えるでしょうか?近年のさまざまな調査によると、イノベーションの創出や労働生産性の面において、日本は欧米諸国に比べて後れを取っているのが現状です。

その背景には、『対立を回避する傾向』『リスクを恐れる傾向』など、日本固有の文化による影響が大きくあります。一方で、同じく日本の文化が持つ『傾聴スキル』『尊敬』『責任感』『お客様へのもてなしの姿勢』などは、アジャイルとの親和性が高いと言えるでしょう。アジャイルに向いている要素も持ち合わせている日本は、アジャイルをうまく導入できないはずがない、と断言したいです。

国内でのアジャイル浸透は難しいと感じる方が多いかもしれません。しかし、私は希望を持っています。本日参加されているアジャイル実践者の皆さんが、自社で取り組んだ事例や課題を共有することで、アジャイルはさらに活発化するでしょう」

講演スライド:https://www.slideshare.net/gregoryfontaine1/scrum-sunrise-2023-77ce

 

ネットワーキングパーティー

すべてのセッション終了後には、立食形式でネットワーキングパーティーを実施しました。ベンダーやアジャイルコーチとして顧客を支援している方、事業会社にてアジャイルの取り組みを先導中の方など、企業や役割の垣根を超えてカジュアルに交流いただける場となったようです。

パーティー中には、プロフェッショナル・スクラム・トレーナーのアレックス・バギディ氏によるミニセミナーも行われました。参加者とのインタラクティブなやり取りを交えながら、アフリカで様々な状況にある人々のために手の届きやすい価格で提供された健康保険サービスのアプリ開発事例をお話しいただきました。

講演スライド:https://speakerdeck.com/itpreneurs/20231110scrumsunrise-alex-gbaguidi

皆さまのおかげで、盛況のうちにカンファレンスを終えることができました。
参加者の方からお寄せいただいた声をいくつか紹介します。

  • 日常業務でモヤモヤしていたことを、セッションでうまく言語化していただけて学びの多い時間だった
  • アジャイルであることの大切さを再認識できた
  • 色々な角度からのScrumに関する活きた情報が得られ、またネットワーキングで新たに知り合えた方々もいて、非常にいいイベントだった

ITプレナーズは、今後もアジャイル・スクラムに関心のある方、実践中の方を支援し、国内におけるスクラムの活動をますます盛り上げていけるような情報提供や取り組みを行ってまいります。アジャイル・スクラムの人材育成に関するお悩みがございましたら、是非お気軽にご相談ください。

ITプレナーズが提供するScrum.org™トレーニングについて

現在、世界中で90万人以上の認定資格者を有し、グローバルに通用するScrum.org™の認定資格。資格の受験のみも可能ですが、ITプレナーズでは実践的な学びを得るための研修も提供しています。

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