事例紹介

スクラムマスター育成で、生産性の高いチーム運営とプロダクト開発を目指す

株式会社北國銀行様
研修事例
2022.3.24

「自社サービスの価値やチームの生産性を向上させるため、業務にアジャイルの手法を取り入れたい」と考える企業が増えています。一方で、現場へのマインドセットの浸透やチームビルディングなど、導入段階で高いハードルを感じてしまっているケースも少なくありません。

その中で、DX推進へ向けてアジャイルの手法を積極的に取り組んでいるのが株式会社北國銀行(以下、北國銀行)。これまでにITプレナーズ主催のDevOpsの研修も実施するなど、組織全体の意識醸成や人材育成に力を入れています。

今回は開発現場でのスクラムマスター育成のため、Scrum.org™が提供する「Professional Scrum Master™」を受講。アジャイルの取り組みを統括するシステム部 部長・岩間さんと研修を受講した中川さんに、開発現場で感じていた課題と研修を通しての学びや変容をお聞きしました。

組織の急激な拡大により、チーム運営に課題を感じるように

—お二人の担当業務を教えてください。
岩間さん

北國銀行および北國フィナンシャルホールディングスのグループ全体の、システム開発におけるマネジメント業務全般を担当しております。

 

その中で、アジャイルやDevOpsの考え方を業務に取り入れようと推進してきました。当グループだけでなく地域全体のDX推進も見据えつつ、各所で研修や勉強会などを実施しているところです。

中川さん

私が所属するのは、インターネットバンキングを構築・開発する比較的規模の大きなプロジェクトです。画面デザインからフロントエンドのコーディングまでを手がけるチームが複数あり、その中の一つのチームでリーダーを務めています。

—岩間さんからお話がありましたが、アジャイルの取り組みについて詳しくお聞きしたいです。
岩間さん

グループ全体の取り組みとしては3点あります。

 

1つ目は、ソフトウェア開発での導入です。システム開発組織のうち、すでに半分以上のチームでアジャイルの手法を取り入れています。2つ目は、全社員に向けたアジャイルマインドの浸透です。非IT系の部門でも業務においてインセプションデッキを作成するなど、優先順位づけと業務の可視化をしながら現場で意思決定を進めているところです。3つ目は、地域の企業様向けコンサルティングビジネス部門での導入です。毎日の朝会や振り返りなどのアジャイルの取り組みを導入しています。

—受講前に、それぞれの立場から感じていた課題はどのようなものがありましたか?
岩間さん

中川が所属するインターネットバンキングの開発部門は、役割ごとに14のチームに分かれており、北國銀行内でもとりわけ大所帯の組織。各チームは北國銀行の社員、グループ会社であるデジタルバリューの社員、パートナー企業の方々など所属の異なるメンバーで構成されていて、運営があまりうまくいっていませんでした。スクラムマスターがいないので、タスクの管理や進め方がチームによってまちまちだったんです。

 

そこで、各チームにスクラムマスターを配置し、スクラムチームを支援することで生産性の向上を図り、プロダクトのリリース頻度を上げたいと考えました。チームの心理的安全性を高める狙いもあります。

中川さん

私も、リーダーとしてまさにチーム運営に悩んでいまして。ここ半年間でチーム人数が2倍以上に増え、全員で協働する難しさを感じるようになりました。各自の担当タスクをこなすだけではなく、うまく相互作用をもたらせるチームづくりを実現したかったんです。

スクラムの基礎知識が身につき、実務に活かせる気づきを得られた

—研修を受講した感想をお聞かせください。
中川さん

2つの点で研修の良さを実感しました。1つ目は、講師の方が素晴らしかったことです。教えてくださる内容だけでなく、ファシリテーションの点でも非常に勉強になりました。ちょっとした発言も褒めてくれて、嬉しかったですね。チームをモチベートする際の参考にしようと思います。

 

2つ目は、公開講座への参加だったため、他社さんとの交流を持てたことです。演習の時間でそれぞれの悩みを共有したり、「こういうときはどうしていますか?」というような相談をしたりと、リアルな情報交換ができました。合計2日間(0.5日×4回)という期間でしたが、もっとコミュニケーションの時間が欲しかったくらい満足感が高かったです。

—研修を通じて、一番の学びは何でしたか?
中川さん

スクラムマスターとして必要なスクラムの知識を習得できたことです。従来のシステム開発では、スクラムの要素を見よう見まねで取り入れていましたが、研修で改めて体系的に学べました。

 

明確に決まったスクラムマスターがいなかったことに加えて、普段の業務にスクラムの手法をいまいち落とし込めていなかったのですが、「何をやるべきか」「なぜそれが必要なのか」を知れてとてもしっくりくる感覚がありましたね。

 

結果、自分に足りなかった視点を得られたと思います。研修中に、「良いチームにはスクラムマスターが必要ない」という話がありましたが、開発メンバーの一人ひとりが自律的に考えてチームで助け合ってやっていかなければならないと実感しました。

—受講後の認定試験についてはいかがでしたか?
中川さん

試験内容は決して簡単ではありませんが、きちんと準備すれば大丈夫だと思います。研修の終盤に用意いただいた模擬試験を何回か解くことで、安心して本番に臨めました。Scrum.org™はスクラムの原則に忠実な内容なので、研修で基礎の部分をしっかりとインプットできたのは非常に役に立ったと感じます。

個々にタスクをこなすチームから、協働できるチームへ

—今回参加した研修によって、どのような成果や行動変容が生まれていますか?
中川さん

チームメンバーへの仕事の任せ方が大きく変わりました。人数が増えるまでは全体のリソースも限られていたので、「全て自分でやらなければ」という意識が強くて。今の体制になってからも従来のやり方をなかなか変えられず、細かい進め方を私が検討してからメンバーにタスクを振り分ける形になってしまっていたんです。

 

そこで、チームでどのように協働していくべきかを見直しました。メンバーに「自分たちでやり方を考えてみてほしい」と、タスクのプロセス検討段階から託してみたり、何をやってみたいか希望を聞いたりする機会を増やしたんです。

 

そのうち、メンバーが「このタスクやっておきますね」「技術調査を担当したいです」と、自発的に動いてくれるようになりました。また、仕事を任せるうちに「この人はこんなことが得意なんだ」という新たな一面の発見がたくさんあり、チーム全体でできることが増えたと感じます。

 

行動の変化によって、時間的にも精神的にも余裕が生まれました。今まで着手できていなかった工数の見積もりや生産性の測定にも目を向けられるようになったのは大きな収穫です。

—チームに大きな変革が生まれたのですね。最後に、今後の展望についてお聞かせください。
中川さん

シンプルですが、これからもより良いチームをつくれるように動いていきたいですね。メンバーともお互いが気持ちよく仕事できるように、常日頃からコミュニケーションをとっていきたいと思います。

岩間さん

「いかに効率よくチームの生産性を向上させていくか」をテーマに、マネジメントの立場から、メンバーそれぞれが自走できる環境をつくっていきたいです。

 

スクラムマスターの育成計画は、まだ始まったばかり。社内でこの役割を果たせる人が順調に増えていけば、チーム全体の意識にも大きな変革をもたらせるのではないかと考えています。ひいては組織の成長、そして良いプロダクトの提供につなげていくつもりです。


お客様情報 - 株式会社北國銀行

■ 企業概要
北國銀行は、昭和18年12月18日、加能合同銀行・加州銀行・能和銀行の3行が合併して誕生しました。
地域のリーディングバンクとして、「豊かな明日へ、信頼の架け橋を~ふれあいの輪を拡げ、地域と共に豊かな未来を築きます~」の企業理念のもと、地域のさまざまな活動で、リーダーシップを発揮し、「地域の皆さまに信頼され、愛される銀行」を目指しています。
■ 本社所在地:石川県金沢市広岡2丁目12番6号
■ 設立年月日:1943年12月18日
■ 資本金:26,673百万円
■ 従業員数:2,147名(2021年10月1日時点)
■ ウェブサイト:https://www.hokkokubank.co.jp/

Professional Scrum Master™ (PSM)

Professional Scrum Master™(PSM)は、プロフェッショナル・スクラムとスクラムマスターの役割をしっかりと理解する、演習中心のインタラクティブなコースです。ディスカッションと演習の組み合わせで、スクラムの基本原則とアジャイルのマインドセットを深く理解し、成功するスクラムチームが実践しているプラクティスを学びます。

また、このコースには、世界的に認められているProfessional Scrum Master™ I(PSM I)認定試験も含まれています。


※取材は2022年2月に行いました。

ライター: Yui Murao