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【トップ対談】進化し続けられる組織づくりに伴走したい —ITプレナーズと日本クイントが合併で目指す未来—

左から 旧日本クイント代表・最上千佳子、ITプレナーズ代表・岡本宗之

2022年4月1日、日本クイント株式会社(以下、日本クイント)は株式会社ITプレナーズジャパン・アジアパシフィック(以下、ITプレナーズ)と統合しました。

「ライトをつけて変革を促す」をミッションに、2006年の設立以来、ITマネジメント領域の教育コンテンツを提供してきたITプレナーズと、組織がテクノロジーを活かすためのマネジメント・コンサルティングや人材育成を行ってきた日本クイント。

両代表は、揃って「DX時代には、あらゆる企業にITIL®・アジャイル・DevOpsの考え方が求められる」と力強く断言します。

これから手を取り合って、DXのためのベストプラクティスの普及を通じ、人材育成・組織開発サービスを提供していく2社。合併の経緯や成し遂げたいことについて、ITプレナーズ代表・岡本と旧日本クイント代表・最上が語りました。

合併前から共通していた「組織開発」への思い

—ITプレナーズと日本クイントの代表として、お2人が出会ったきっかけは?
岡本

私が担当営業時代の2012年に、大きなカンファレンスでご挨拶をさせていただいたのが初めての出会いだと思います。そのあと、本格的に協働するようになったのは2018年6月に共催したDevOps Agile Skills Association(以下、DASA)※のイベントでしたね。

 

※DevOpsとアジャイルのスキル開発を目的としたオープンなグローバルコミュニティ。

最上

もともと日本クイントとITプレナーズは両社ともオランダに本社があり、関係性も良好でした。加えて、ちょうどITプレナーズが日本で初めて「フェニックスプロジェクト DevOpsシミュレーション研修」の提供を開始し、DevOpsを日本市場でも広めていこうというタイミングで。

 

周りからすると私たちは競合関係に見えたかもしれませんが、研修やコンサルティングを企業へ直販する日本クイントに対して、ITプレナーズは研修コンテンツをパートナー企業に販売するビジネスモデルで、うまくすみ分けができていました。なので協働にも違和感がなく、ぜひやりましょうという話になったんです。

—それぞれの会社の印象を教えてください。
最上

ITIL®の考えを日本に広めるために頑張っている、同志のような存在だと感じていました。

岡本

私が事業開発担当の頃に特に感じていたのは、ITIL®の専門家としての最上さんの存在感の大きさです。強烈な個性で日本クイントという看板を背負っているという印象でしたね。

—2社の歩みについても伺いたいと思います。これまで会社として特に大切にしてきたことは何でしょうか?
最上

対外的には、日本クイントという企業とITIL®の知名度向上を目指してきました。私が表に出る機会が多かったのは、それが目標達成のための手段の一つだと考えていたからです。

 

私は小さい頃から、「~~らしくないよね」って言われるのが好きなんですよね(笑)。なので、良い意味で社長という肩書を意識せずに、コンシェルジュのような立場でお客様にとって価値あるものをご提案させていただこうと心がけてきました。

 

お客様の抱える課題や予算感をお聞きした上で、日本クイントが提供する研修よりも適したサービスがあれば、他社さんのものを勧めることもありましたね。ですが、その姿勢が結果的にお客様との信頼関係の構築につながったと思います。

岡本

人材育成・組織開発を支援する会社として、ITIL®以外にもいかに提供サービスの領域を広げていくかがここ数年の課題でした。

そこで、冒頭にお話ししたDevOpsやアジャイルのコンテンツ開発にも注力してきました。最近ではそのかいがあって、多種多様な業種の企業様に声をかけていただけるようになってきたと感じます。

最上

たしかに、ITプレナーズはアジャイルやDevOpsの領域にも非常に力を入れている印象が強いです。日本クイントが考える真のミッションも、組織のサービスマネジメントや人材マネジメントを支援すること。ITIL®は、あくまでもそのために有用な一つの手段なんですよね。

 

つまりは、市場にとって必要な、価値のあるサービスを届けたい。そこはITプレナーズと非常にリンクする部分だと思います。

—サービス提供の形は少し異なるものの、根底にある思想は共通しているのですね。今回の合併によって、どのようなシナジーが期待されますか?
岡本

シンプルに、できることが増えると感じています。今後はIT企業に限らずあらゆるビジネスにおいて、ITIL®やアジャイルの考えがますます必要とされるはず。ITプレナーズはITIL®の分野においては一定のポジションを築けていると思いますが、他の領域を広めていくには1社単独だとインパクトが足りません。

 

今回、日本クイントと一緒になったことで、幅広い分野の教材開発やセールス業務およびオペレーションをもっと拡大できると確信しています。

最上

日本クイントはITプレナーズ以上に少数精鋭の組織でしたので、これまでは目の前のお客様に必要とされる内容の研修提供を優先的に進めてきました。一方で、DevOpsやアジャイルを社会に浸透させていく活動などにはあまり手が回っていなかったのが正直なところです。

 

その点、ITプレナーズはこれまでにITマネジメント分野のさまざまなイベントやコミュニティに参加し、活動の土台を作っています。日本クイントのメンバーが参画することで、IT企業に限らずあらゆる企業様のDX推進を一緒に行えると感じましたね。

組織変革やサービス改善に、ますます必要とされるITマネジメントの考え

—そもそも、ITプレナーズが提供するITIL®・アジャイル・DevOpsの考えは、なぜ今の組織に求められているのでしょうか?
最上

シンプルに言うと、お客様をはじめステークホルダーへ価値提供をする上で必要な価値観であるからです。

 

ITIL® は、初版から30年以上「顧客への価値提供」と「継続的改善」を強く推奨してきました。それは最新のITIL® 4 でも受け継がれており、さらに「顧客だけでなく、利害関係者全員にとっての価値共創」という方向へ進化しています。世界が注目しているSDGsの動きにも合致しているのではないでしょうか。

 

アジャイルやDevOpsについては、大きく2つの背景があります。1つ目は、コロナ禍でリモートワークが浸透しつつあることです。その中で、業務上のオペレーションやコミュニケーションを円滑に行うために、企業としてDX化を図る必要性が生じました。

 

2つ目は、ユーザー側が技術を活用する際の意識の変化です。昔は、ツールにしてもシステムにしても、完成されたサービスを使うのが当たり前の時代でした。ですが現在は、世の中の急激な変化に応じて「少しエラーがあってもすぐに修正してもらえればOKだから、早くそのツールを使いたい」と考える人が増えたように思います。そうすると、サービス提供においてアジャイルやDevOpsの考え方がとても大事になってくるんです。

岡本

また、組織開発においてもこれらの価値観が求められるようになってきました。今、あらゆる企業がDXを促進するためにさまざまなツールを導入していると思います。

 

ですが、ツールを揃えるだけではデジタル変革はなかなか進みません。なぜなら、そのツールを使う人たちがサービス改善や組織構築について正しい手法を理解していないと、効果的な活用には至らないからです。そこで、ツール導入の波から少し遅れて「社内の人材を育成しなければならない」という意識も醸成されてきました。

最上

それは大きな要因ですよね。結局、プロジェクトや各業務のマネジメント手法を理解して管理をできるメンバーがいなければ、良いサービスを生み出せません。

 

2001年に「アジャイルソフトウェア開発宣言」が出され、20年以上前からアジャイルそのものの認知はされていましたが、当時は技術力や資金を持つ会社でなければ業務支援ツールを取り入れることはできませんでした。

 

ですが、今や世の中の技術レベルが全体的に向上し、あらゆるツールを安価で購入できるようになりました。現在私たちが当たり前に使っているZoomなどは、20年前であればウェブミーティングの仕組みを自社で構築するだけで億単位の費用がかかっていたでしょう。

 

以前よりツールの導入・活用のハードルが下がり、あらゆる企業で取り入れられるようになった結果、事業とITが融合し、ほぼ全ての事業活動にITが使用されています。そこで、IT企業以外でも「ITをより戦略的に自社ビジネスに活用したい」「ITサービスの運用・改善にしっかり取り組みたい」「組織体制を整えたい」というニーズが増えているのです。

 

ITIL®・アジャイル・DevOpsは、IT企業やシステム運用担当の人だけが勉強するものではなく、より幅広い分野で活用できるという認識が浸透してきたと感じます。

コンテンツプロバイダとして、顧客の組織開発に伴走したい

—世の中でのニーズや動きが生まれている中で、新生ITプレナーズとして、今後の展望を聞かせてください。
最上

少し抽象的な話になりますが、組織や個人の「変化」に対する抵抗感を軽減して、前向きな行動へと促していきたいと思っています。

岡本

面白いですね。どういうことでしょうか?

最上

ITIL® 4が示すプラクティスの一つである「組織管理の変更」の考え方と似ています。新たな技術やプロダクトがどんどん生まれている現代社会。その中でユーザーに選ばれるサービスであるためには、今までのウォーターフォール型で「完成形」を提供するのではなく、アジャイル型の開発で改善を繰り返しながらニーズに応えていくべきです。

 

それを実現できるのがアジャイルやDevOpsの考えであり、ITIL® 4でも「顧客との価値共創」をキーワードに打ち出しています。お客様にサービスを使っていただきフィードバックを受け、また機能やサービスの修正をしていく。組織や個人の仕事の進め方にもこの価値観を取り入れたら、進化し続けることができますし、失敗でさえも改善につながる希望となり得ます。自社、顧客、ユーザー全員が幸せになれる考えだと思うんです。

岡本

アジャイルは単なる開発手法の話にとどまらず、これからの時代を誰もがよりしなやかに健やかに生きていくために大切な考えですよね。自分自身のマインドの持ち方や、他者への関わり方における良いエッセンスが詰まっています。だからこそ、一人でも多くのビジネスパーソンに浸透させていきたいと思っています。

—幅広い層の方に向けて、どのようにITIL®・アジャイル・DevOpsの考えを広めていきたいと考えていますか?
最上

研修という形でのサービス提供がメインだった日本クイントと異なり、ITプレナーズではコンテンツプロバイダとしての立ち位置を大事にしていると感じます。1人の講師で教えられる人数には限りがありますが、良いコンテンツを作れば、講師側にも受講者側にもより広がっていくと。

岡本

物理的な制約によってその価値が広まらないのはもったいない。だからこそITプレナーズは良い教育コンテンツを作り、伝播の担い手となってくれる講師の方とともに、組織開発の支援を行うコンテンツプロバイダでありたいと思っています。それは今後も変わりません。

最上

これから私たちはITプレナーズとして、これまで以上に組織や個人にとって有用なフレームワークおよび手法を正しく伝えていくことを目指します。

 

また、プロダクトアウトではなくマーケットインの考え方で、お客様のニーズに合った講義やワークショップなどのコンテンツ開発もできればと思っています。日本クイントではお客様に対するコンサルティングも得意としていたので、お互いの良い部分をコラボレーションさせていきたいですね。

 

今回、BBT(ビジネス・ブレークスルー)グループの一員になれたことも非常に光栄です。BBTという強固な教育プラットフォームのノウハウを参考にさせていただきながら、より良いコンテンツを自由度を上げて展開できる点にも期待しています。

岡本

そうですね。我々がまだ出会えていないけれど組織のDX化に課題を持っている方々とご一緒できるように、新たなチャネルの開拓や構築をITプレナーズとしても積極的に取り組むつもりです。最上さん、そして日本クイントの皆さんと、ITとビジネスの架け橋となる存在を目指していきたいと思います。

 

 

ITプレナーズでは、人材育成・組織開発を支援するさまざまなコース・イベントを提供してまいります。教材開発から研修実施、DX化についてのご相談など、お悩みや現状に合わせてさまざまな形にサービスのカスタマイズも可能です。ぜひお気軽にご相談ください!


※取材は2022年3月に行いました。
ライター: Yui Murao