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プラットフォームエンジニアリングとは? 〜開発者体験の向上と効率化を実現する新たなアプローチ〜

2026.5.26

クラウドネイティブが当たり前になった今、便利さと引き換えに、現場の「認知負荷」は静かに増え続けています。開発は複雑な環境構築に追われて本来の仕事に集中できず、運用は急増する依頼とルール維持の板挟みになってしまう……。こうした負荷による生産性低下を解決するアプローチとして注目されているのが「プラットフォームエンジニアリング(Platform Engineering)」です。

ガートナーの予測によれば、2026年までに大規模なソフトウェア開発組織の80パーセントが、専門のプラットフォームエンジニアリングチームを導入、あるいは本格稼働させると言われています。まさに、技術トレンドの最前線にある重要な概念と言えます。

本記事では、プラットフォームエンジニアリングの定義から、導入のメリット、成功のための原則、そして求められるスキルについて、詳しく解説します。

プラットフォームエンジニアリングの定義と役割

プラットフォームエンジニアリングが注目される背景には、クラウドネイティブ開発の台頭と、それに伴う開発環境の複雑化があります。2008年頃から始まったDevOpsの流れに続き、SRE(Site Reliability Engineering)やマイクロサービスが普及する中で、NetflixやSpotify、Googleといった先行企業が現在のプラットフォームエンジニアリングに近い取り組みを早期から採用し、大きな成果を上げてきました。

プラットフォームエンジニアリングとは、一言で言えば「開発者がセルフサービスで使える『開発の基盤(プラットフォーム)』を構築し、開発者体験(DX)を向上させる取り組み」のことです。

Microsoftは、プラットフォームエンジニアリングを次のように定義しています。

「プラットフォームエンジニアリングはDevOpsの原則に基づいて構築されたプラクティスであり、安全で統制されたフレームワークの中で、開発者体験とセルフサービス能力を改善することにより、各開発チームのセキュリティ、コンプライアンス、コスト、およびビジネス価値実現までの時間を改善することを目的としています。これは、プロダクト思考のマインドセットの変⾰であり、同時にそれをサポートするツールとシステムの集合体です。」

(出典:https://learn.microsoft.com/en-us/platform-engineering/what-is-platform-engineering

空港に例えるプラットフォームの概念

プラットフォームエンジニアリングを直感的に理解するために、「空港と航空会社」のたとえがよく使われます。

航空会社(=開発チーム)は、乗客(=ユーザー)を最速・最高品質で目的地に届けることに専念したいと考えています。セキュリティチェック、離発着の管理、手荷物受取所といった業務は「誰かに任せたい」と思っています。
一方、空港(=プラットフォームエンジニアリングチーム)は、航空会社が「飛行機を飛ばすこと」だけに集中できるよう、滑走路・管制・インフラ全体を整備・運営します。

つまり、プラットフォームエンジニアリングチームとは、開発者がプロダクト開発に集中できる環境をつくる「空港運営チーム」なのです。

プラットフォームエンジニアリングがもたらすメリット

プラットフォームエンジニアリング導入の効果は、以下のように開発者とビジネスの両面に現れます。

開発者へのメリット
  • 開発速度が向上する(2023 年の State of DevOps Reportでは、68%が開発速度の向上を実感し、42%が大幅に改善したと回答)
  • セキュリティや複雑なワークフローをプラットフォームが抽象化することで、認知負荷を軽減し、開発者が本来の業務に集中できる
  • 新規メンバーが環境構築に手間取らず、早期に価値提供を開始できる
ビジネスへのメリット
  • クラウド利用の最適化や標準化により、運用コストの削減に貢献
  • 開発サイクルが加速し、新機能をより早く顧客に届けられる
  • 「ガードレール」を提供することで、コンプライアンスを維持しながら信頼性を高めることができる

 

成功のための原則と「プロダクト思考」

プラットフォームエンジニアリングには、コラボレーションと開発者体験の向上を推進するために、次のような原則があります。

  • 機能的なコラボレーションとサイロの排除をプログラムで可能にする
  • 価値実現までの時間を短縮し、リードタイムを短縮する
  • ⾃動化と「すべてをコードで(Everything as Code)」を強く意識する
  • 継続的改善を促しながら、開発者が⾃律できる環境を作る

そして、プラットフォームエンジニアリングを導入する際、最も重要なのはプラットフォームを単なるツールではなく、以下のように一つのプロダクトとして捉えること(プロダクト思考)です。

開発者は「顧客」
  • プラットフォームをツールの集合体ではなく、開発者が使いやすい「魅力的な内部プロダクト」として設計します。
スモールスタート
  • 最初から巨大なものを作ろうとせず、開発者が直面している共通の課題から小さく始め、反復的に改善していきます。
セルフサービスと自動化
  • 調整や待ち時間を減らし、開発者が自律的にリソースを利用できるAPIやツールを提供します。

 

プラットフォームエンジニアリングチームに必要なスキル

プラットフォームチームは、さまざまな専門領域のステークホルダーを「横串」でつなぎ、調整していく立場にあります。そのため、プラットフォームエンジニアリングチームには、従来のインフラエンジニアの枠を超えた、次のような多様なスキルセットが求められます。

テクニカルスキル
  • クラウド、IaC(Infrastructure as Code)、CI/CD、コンテナ、オブザーバビリティなど、幅広い技術的なスキル
プロダクトマネジメントスキル/プロジェクトマネジメントスキル
  • ユーザーのニーズを要件に落とし込み、プラットフォームを継続的に進化させるスキル
ソフトスキル
  • 開発チーム、インフラチーム、経営層など複数のステークホルダーと円滑にコミュニケーションするスキル

なお、これらすべてを一人で備える必要はありません。チームとしてバランスよく持つことが重要です。

まとめ

プラットフォームエンジニアリングは、開発者体験の向上と効率化を実現し、組織全体の生産性を引き上げる強力なアプローチです。開発者の認知負荷を下げ、価値提供を加速するこの仕組みは、今後のデジタル競争において不可欠な要素となるでしょう。

まずは、自社の開発者がどのような「煩わしさ」を抱えているのかを整理し、どこから標準化・セルフサービス化すべきかを見極めるところから始めてみてはいかがでしょうか。

プラットフォームエンジニアリングについてより深く学びたい方に

本記事を通じて、プラットフォームエンジニアリングの概念や重要性について理解を深めていただけたかと思います。さらに自組織で実践し、成果につなげるためには、体系的な知識とスキルの習得が効果的です。

プラットフォームエンジニアリングの導入を進める方には、DASA(DevOps Agile Skills Association)が提供する「DASA プラットフォームエンジニアリング認定プログラム」の受講をおすすめします。

本プログラムでは、プラットフォームを単なるインフラではなく「プロダクト」として捉える視点を養います。プラットフォームのビジョンを組織の目標と結びつけ、常に顧客中心の姿勢で、利用する開発者にとって最適な体験を設計する方法を学びます。
修了後には認定試験を受験することで、プラットフォームエンジニアリングについての知識とスキルを証明できます。


本記事はDevOpsDaysTokyo2025におけるITプレナーズの講演「プラットフォームエンジニアリングとは? 〜開発者体験の向上と効率化を実現する新たなアプローチ〜」をもとに編集・構成しています。