事例紹介

お客様と共に価値を創り上げるために──ITIL® 4マスター取得者に聞く、学習の意義と可能性

株式会社シーイーシー様
受講者の声
2025.2.5

株式会社シーイーシーの営業職として、お客様に対して様々なICT活用提案を行う加藤雄一さんは、社内で率先してITIL® 4の研修受講と資格取得に取り組み、ITIL® 4マスター取得者となりました。

技術部門との「共通言語」を求めて始めたITIL® 4の学習は、自身に職種を超えた新たな気づきをもたらしたと語ります。なぜ営業職の立場からITIL® 4を学ぼうと考えたのか、ITIL® 4上位資格の受講および資格取得を通じて得たもの、実務適用への展望などについて詳しく伺いました。


  • ITIL® 4 スペシャリスト(CDS、DSV、HVIT)
  • ITIL® 4 ストラテジスト(DPI)
  • ITIL® 4 リーダー(DITS)
  • ITIL® 4 プラクティス・マネージャー(MSF)
  • 技術部門との連携をスムーズにするための「共通言語」を獲得し、お客様への提案力を高めるため
  • グローバルスタンダードの考えを学び、業務改善や若手社員育成に活かすため
  • プロダクトアウトからお客様起点の発想へ
  • お客様と同じ目線での対話を重視し、本質的な課題を捉える視点が身についた
  • 過去の成功体験や思い込みから脱し、ビジネスに対する考え方のアップデートを実現

技術部門との「共通言語」獲得のため、営業職の立場からITIL® 4を学び始めた

──ご担当されている業務についてお聞かせください。
加藤さん

私の所属は営業本部 公共営業部です。中央省庁や地方自治体をはじめとする公共分野、および医療・教育など準公共分野のお客様に対して、営業戦略立案や販促活動を行っています。

 

現在、所属部署で特に注力しているのが、全国の自治体システムの標準化およびガバメントクラウド移行に関する支援です。自治体にとっては大きなパラダイムシフトとなるこの移行に伴い、建物で例えれば基礎となる基盤サービスを中心に、システム運用管理の手間やコスト面の課題を解消する様々なサービスを提供しています。

──ITIL® 4の学習を始められたきっかけを教えていただけますか。
加藤さん

業務の中で直面した課題意識から、ITIL® 4を学習しようと考えました。具体的には、営業部門と技術部門が、お客様目線で同じスタンスに立つための方法を学びたいということです。

 

社員の8割がエンジニアで構成されている当社では、これまで技術部門が開発した製品やサービスをそのまま営業が販売する文化が根付いていました。しかし、変化の激しい時代では、お客様の課題やニーズは刻一刻と変化します。営業として既存の製品・サービスで解決できる範囲にとどまらず、上流工程から包括的な提案を行いたいと考えても、技術部門とはなかなか意見が噛み合わない場面がしばしばありました。

 

お客様の本質的な課題を捉え、より効果的な提案を行うためには、営業と技術が同じ視点で議論できる「共通言語」が必要だと感じ、そこで注目したのがITIL® 4だったのです。

──ITIL® 4の学習に対して、どのような期待を持って取り組まれましたか。
加藤さん

ITIL®はv3の時代から知っていたのですが、当時は「運用管理のためのフレームワーク」という認識で、営業職の自分にはあまりなじみのないものだと感じていました。

 

ところが、新しく登場したITIL® 4は「DXのためのベストプラクティス集」として位置づけられています。より広い視点から、業務や組織を改善するのに役立つのではないかと改めて関心を持ちました。

ITIL®は、顧客との価値共創において、世界中の様々な組織が試行錯誤の末に生み出した成功事例を集めたものです。これらを体系的に学び、技術部門と共通の知識基盤を持つことで、より建設的な議論ができるようになるのではないかと考えました。

どの職種にも通じる必要なエッセンスが詰まったITIL® 4上位資格の学び

──上位資格を取得する中で、印象に残っているコースや内容について教えてください。
加藤さん

特に興味深かったのは「ITIL® 4 スペシャリスト:利害関係者の価値を主導(DSV)」の考えです。

 

DSVでは、顧客がサービスを使うまでの感情や体験の流れを表すカスタマージャーニーを、7つのステップに分けて捉えていく重要性が示されています。この概念を知ったことで、プロダクトアウトから脱却してお客様の立場からサービス提供を考える視点が、私にはまだまだ足りないと気づかされました。

 

世の中では「モノづくりからコトづくり」の重要性が叫ばれる通り、お客様に対して中長期的に伴走するビジネスモデルへの転換が求められています。私たちは、カスタマージャーニーの流れを意識しながらお客様との価値共創に取り組まなければならないと、改めて強く認識しました。

──営業職の方がITIL® 4マスターを取得されるケースはまだまだ珍しいと思いますが、それゆえのご苦労もあったのではないでしょうか。
加藤さん

上位資格の各コースを受講した際、普段の業務では接することの少ない概念を学ぶのは大変でしたね。

 

とりわけ、最新技術の適応について学ぶ「ITIL® 4 スペシャリスト:ハイベロシティIT(HVIT)」と、インシデント管理など運用の実務について深く学ぶ「ITIL® 4 プラクティス・マネージャー:Monitor, Support & Fulfill(MSF)」は、難しく感じました。

 

しかし、目標を達成する組織になるための重要なポイントを学ぶ「ITIL® 4 ストラテジスト:方向付け、計画、改善(DPI)」では、組織トップの視点から考え行動する大切さを学べたように、どの職種にも役立つエッセンスが詰まっていると感じます。

 

ビジネスを行ううえで、自社製品の理解や技術的な基礎知識の習得は欠かせません。しかし、何より重要なのは、俯瞰的な視点で物事を捉え、お客様とビジネスをどのように創り上げていくかを考えることです。ITIL® 4はそういった考えを身に付けるのに適した内容であり、エンジニア以外の職種でも学べることが多くあります。

──他にもマスター資格取得を通じて感じたことがあればお聞かせください。
加藤さん

ITIL® 4を学び、自分の中にあったビジネスの常識が180度ひっくり返るような感覚を得ました。

 

私はシーイーシーに入社する前、中小企業の社長を務めていた経験があります。一定の実績を上げ、その成功体験から「ビジネスとはこうあるべき」という経験則が自分の中に確立していました。しかしITIL® 4でバリューストリーム(価値の流れ)について学び始め、過去の仕事の進め方やマネジメントに無理があったのではないかと自省する場面も多かったです。

 

年を重ねれば重ねるほど、自分の中には経験が蓄積されていきます。それには良い面もありますが、一方で過去の成功体験や思い込みに固執して今の時代にそぐわないやり方のままになっている可能性もあります。新しい概念を習得することで、自らを省みて、考え方をアップデート・再構築できるチャンスに恵まれました。

 

「リスキリング」とは、まさにこういうことなのだと実感しましたね。今後も、未知への学びを意欲的に楽しみ続けられる自分でありたいと感じます。

「お客様第一主義」をモットーに、組織全体にITIL® 4の考えを浸透させていきたい

──今後、ITIL®の学びをどのように活かしていきたいとお考えですか。
加藤さん

まずは、日々のお客様との向き合い方においてITIL® 4の学びを実践していきたいです。

 

提案からサービス提供まで一連の営業活動において、ITIL® 4のフレームワークをもとに振り返ることで、業務改善につなげられるのではないかと考えています。

 

特に、お客様がどういった状況に置かれ、何に課題を感じているのか、しっかりと把握することが価値を共創する第一歩です。お客様と同じ目線で対話を重ねるプロセスをこれまで以上に丁寧に行っていくつもりです。

 

私の上長である営業本部長は、日頃から「お客様第一主義」をモットーに掲げています。営業は、お客様のニーズを先回りして理解し、技術的に最適な解決策を提案するITコーディネーターであるべきだと。ITIL® 4は、より良いITコーディネーターとなるために必要なスキルを学べると感じます。

──ITIL® 4の知識は、ご自身の業務改善だけでなく、組織としても活用できそうですね。
加藤さん

その通りです。自分ひとりで知識をとどめておくのではなく、所属する組織への浸透も実現していきたいです。

 

たとえば、パートナー会社の製品を提供するにも、ITサービスマネジメントの知識があるのとないのでは製品理解の深さも大きく変わります。そこで、実務に活かせる内容として、ITIL® 4を学ぶ意義を周りにも伝えていきたいですね。ひいては、若手社員が業務において活躍する支援を行っていくつもりです。

──そのような組織づくりに向けて、会社としてのサポートや環境はいかがでしょうか。
加藤さん

当社の社長は、2023年2月の就任当初から「シーイーシーを働き続けたい会社にする」と宣言してきました。従業員満足度が上がれば、パフォーマンス向上により顧客満足度も上がり、会社として成長し続けられることを意図しての言葉だと思います。

 

同時に「ひるまず挑戦する」ことも推奨しており、トップがそう発信し続けることで、会社にそのような文化が根付きつつあります。つまり、私たち従業員にとって、自分のスキルを思い切り発揮できる環境があるということです。その環境を大いに活用し、私自身もさらに様々なチャレンジを続けていきたいと思います。


【受講者プロフィール】

加藤 雄一(かとう ゆういち)|1967年8月11日生まれ。東京都新宿区出身。信州大学経済学部中退後、10年間、韓国や米国などで遊学。帰国後、日韓合弁IT企業の代表を経て、株式会社シーイーシーに入社し、現在に至る。営業本部 公共営業部所属 シニアアドバイザー ITIL®マスター、PMI®認定PMP®

お客様情報

社名 株式会社シーイーシー
業種 情報通信
創立 1968年2月24日
資本金 65億8千6百万円
従業員数 2,330名(2024年4月1日現在)
ウェブサイト https://www.cec-ltd.co.jp/

ITプレナーズのITIL® 4研修

ITプレナーズのITIL®研修では、ITIL®の概念や定義の習得はもちろん、演習を組み合わせたトレーニングを通じて、現場でITサービスマネジメントの知識を活用できる人材の育成を支援します。

ITプレナーズは、日本国内でのITIL®の浸透に深く携わっている業界トップシェア企業です。ITIL®公式書籍のレビューに参加している講師や、ITIL®の認定団体であるAXELOSのSME(Subject Matter Expert: 内容領域専門家)を担当している講師もおり、マーケットリーダーとして常にITIL®の最新情報を提供しています。

ITIL®の体系的な知識を習得し、実務に活かしたいと考える方はぜひご受講ください。


※取材は2024年12月に行いました。

取材・文:Yui Murao