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Scrum.org™の認定スクラムマスター研修「PSM」「PSM-A」それぞれの違いと選び方を解説!

スクラムは、複雑な課題に立ち向かいながら、チームが協力して価値を生み出すためのアジャイルなフレームワークです。もともとはソフトウェア開発の現場で生まれましたが、現在では幅広い分野に広がり、多くの企業で導入が進んでいます。

スクラムを実践するチームの中で重要な役割の一つを担うのが、チームの自律性を促し、障害を取り除き、スクラムを組織に根づかせる存在である「スクラムマスター」です。

本記事では、スクラムマスターの責任(役割)について体系的に学べるScrum.org™の認定研修を2つ紹介し、その違いや選び方もお伝えします!

スクラム関連のトレーニング・認定資格を提供する「Scrum.org™」とは?

Scrum.org™は、スクラムの共同創案者であり、スクラムのバイブル的存在「スクラムガイド」著者のケン・シュエイバー氏が2009年に設立した団体です。グローバルに通用するスクラムのトレーニングと資格を提供し、スクラムマスターに特化したトレーニングとしては、以下の2コースを展開しています。

  • スクラムの理論と原則、スクラムマスターの責任(役割)など基礎知識の理解と実践を目指す「Professional Scrum Master™(以下、PSM)」
  • スクラムマスターとして1年以上の経験を持ち、知識と能力の向上を目指すスクラムマスターを対象とする「Professional Scrum Master™ – Advanced(以下、PSM-A)」

「2つの研修はどう違うの?」「レベル順に受講しなくてはいけないの?」といった疑問にお答えしながら、それぞれの研修の特徴や学べること、選び方のポイントを整理してご紹介します。

それぞれの研修で得られること

PSM:スクラムの理論とスクラムマスターの役割を体系的に理解する

PSMは、スクラムの基礎をしっかりと身につけたい人に最適な研修です。 実務経験の有無は問わず、「スクラムとは?何から始めればいい?」という知識レベルからでも安心して学べる内容になっています。

また、コースには「Professional Scrum Master I (PSM I)」認定試験も含まれています。

【研修で学べること】
  • スクラムの理論・原則を正しく理解する
  • スクラムマスターとしての役割や責任を明確にする
  • スクラムをどのように現場で適用していくかを学ぶ
  • プロダクトバックログを活用して俊敏に計画を立てる方法を知る
  • スクラムマスターがチームで果たすリーダーシップの役割を明確にする
  • スクラムマスターになるために必要なスキル、特性、行動の変化を学ぶ

Scrum.org™が提供する研修は、「学びの実践」に重きを置いているため、受講者同士でのワークやディスカッションの時間が豊富にある点が大きな特徴です。

【ディスカッションテーマ例】
  • スクラムマスターの目的とは?
  • スプリントに含めるプロダクトバックログアイテムの選び方
  • シナリオに基づいた「スクラムマスターとしての適切なふるまい方」

PSMは、スクラムマスターとしての基礎知識を身につけ、「スクラムの基本的な知識に自信が持てない」という状態から脱する第一歩に最適です。

PSM-A:より複雑な現場課題に対し、スクラムマスターとしての最適なふるまいを探求

PSM-Aは、スクラムマスターとしての壁や行き詰まりに直面している方におすすめな上級者向け研修です。スクラムマスターの経験が1年以上ある方には特に有益なコースです。

スクラムの基礎知識があることが前提となっており、単なる知識の習得ではなく、「今の現場で何が起きているのか」「その中で自分はどうふるまうべきか」を探求する対話中心の内容です。

目安として、Scrum.org™が公開している「スクラムオープン(模擬試験)」というスクラムフレームワークの基本的な知識を確認するためのツールで、全問正解ができる知識レベルが求められます。

【研修で学べること】
  • 複雑な現場課題にどう対応するかを深く考える
  • チーム内の対立への対処方法について考える
  • サーバントリーダーシップを体得する
  • 他部門や他組織との連携を進めるアプローチを学ぶ

また、ディスカッションテーマも、スクラムマスターとしてスクラムチームをはじめとするさまざまなステークホルダーとの関係性を築き、効果的な協働を促すための一歩踏み込んだトピックを扱うのが特徴です。

【ディスカッションテーマ例】
  • 複雑性に対処しながらリーダーシップを発揮するには?
  • 開発チーム・POとの信頼関係の築き方
  • ファシリテーションやコーチングのテクニック

※講師からの個別コーチング時間あり(コースによる)

PSM-Aでは、実務で直面している課題に対して自ら答えを導き出していく姿勢を身につけることができます。

PSMとPSM-Aの比較表

項目 PSM PSM-A
対象 スクラム初学者(実践経験を問わず) 実務経験1年以上の現役スクラムマスター
主な目的 スクラムの理論・原則の理解
スクラムマスターの責任(役割)理解
スクラムを適用する方法の理解
より複雑な現場課題への対応力強化
サーバントリーダーシップの習得
他の組織との効果的な連携方法の理解
※受講者はスクラムのフレームワークへの理解がある前提で研修が進められます
ディスカッション
テーマ例
・スクラムマスターの目的とは?
・スプリントにどのプロダクトバックログアイテムを含めるか?
・シナリオに基づくスクラムマスターとしての適切なふるまいについて
・複雑さに対処し、サーバント・リーダーシップを発揮するにはどうするか?
・スクラムマスターが開発チームやプロダクトオーナーをより効果的に支援するためにできることは何か?
・ファシリテーションのテクニック
・講師による個別コーチングを行う時間もあり

研修を選ぶ際のポイントと学習ステップ

PSMとPSM-Aは、どちらも単独で受講が可能です。つまり、PSMを受講していなくても、PSM-Aにチャレンジできます。

ただし、PSM-Aは「Advanced」という名の通り、スクラムのフレームワークを理解していることを前提に講義が進みます。そのため、「スクラムマスターとしての実務経験の有無」が、研修を選ぶ際の大きなポイントになると言えます。まずはご自身の経験レベルを基準に選んでみてください。

また、PSMで基礎を学んだあとにPSM-Aへ進むステップも非常におすすめです。PSMで理論と基本動作を体系的に理解した後、実務で試す中で生まれた課題や悩みを、PSM-Aで深く掘り下げて探求できるからです。

「知識を学ぶ」から「現場での課題に向き合う」へと段階的に進むことで、多くの受講者がスクラムマスターとして大きな成長を実感しています。

簡単チェックリスト!あなたに合うのはどちらのコース?

以下の項目で当てはまるものにチェックしてみてください。チェックの多い方が、あなたにおすすめのコースです。

PSMがおすすめ

PSM-Aがおすすめ


本記事ではScrum.org™の認定資格「PSM」「PSM-A」を中心にご紹介しました。他団体が提供する研修や認定資格との違いが気になる方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

スクラムマスターの学びに「これが正解」という順序はありません。大切なのは、今の自分に合ったレベルから学び始めることです。そして段階的に学びを深めていくことで、チームにも組織にもより大きな変化をもたらすことができます。

まずは「スクラムオープン(模擬試験)」で自身のスクラム知識の現在地を確認しながら、学びの一歩を踏み出してみませんか?

「自分にはPSMとPSM-A、どちらが合うのか決めきれない…」
「チーム全員でスクラムを学びたいけれど、どう進めるのが効果的?」

とお悩みの際は、お気軽にITプレナーズまでお問い合わせください。目的や現在の課題をお伺いしたうえで、最適な研修プランをご提案いたします。

This class will be delivered by Optilearn, a member of Scrum.org’s Partner Training Network.