2022年末から、ITIL® 4の上位資格が続々と日本語化されています。
ITプレナーズでは「ITIL® 4上位書籍を戦隊ものに例えると…?」の記事やセミナー「ITIL® 4の世界 シリーズ」にて、それぞれの上位資格について解説してきましたが、「ITIL® 4ファンデーション、またはITIL® 4 MPトランジションを取得した後、次に何を学べばよいかわからない」とお悩みの方も多いかもしれません。
本記事では、改めてITIL®4の資格体系や基本となる考えを紹介した上で、ITIL® 4 「ITIL®マネージングプロフェッショナル(MP)」「ITIL®ストラテジックリーダー(SL)」の各上位コースがどのような立場や役職の方に役立つかを詳しくご紹介いたします。
※試験が日本語化されているモジュール(※2024年3月時点)について、ご紹介しております。
不確実性が高く、将来の予測ができない、VUCAと呼ばれる時代を迎えました。
企業がビジネスを展開する上で、ITが果たす役割は変化しつつあります。従来は業務の効率を上げる役割として、そして現在は市場の変化に柔軟かつ俊敏に反応し、新しいビジネスを生み出す推進力としての役割が求められています。
そんな中、企業が顧客に価値を提供するために注目されるようになったのが「ITサービスマネジメント」(以下、ITSM)です。改善し続けるカルチャ、行動のよりどころとなる原則、多くの知恵が詰まった内容となっています。
これらを学ぶことによって、社内の効果的な協働を促し、サービス提供の品質と効率を高められるだけでなく、顧客をはじめとするあらゆるステークホルダーと価値を共創することが可能となります。
世界的に広く知られているITSMのベストプラクティスをまとめた書籍群が「ITIL®」です。
かつてITIL®は、サービスを運用するためのノウハウとして捉えられてきました。しかし最新バージョンであるITIL® 4 は、デジタルトランスフォーメーション(DX)や顧客との価値の共創、俊敏なビジネスの実現に着目し、時代に即して大きく進化しています。
各国のITSMの成功事例に加えて、DXを実践している先行企業や組織の事例が加わり刷新され、2019年から2020年にかけ、6冊の書籍(ファンデーション、CDS、DSV、HVIT、DPI、DITS)、そしてサービスの価値を引き出すための成功事例がまとめられた、34のプラクティスガイドとしてリリースされました。
書籍とともに認定資格試験もリリースされ、現在は基礎的な資格のITIL4 🄬ファンデーション、そして上位資格のCDS、DSV、HVIT、DPI、DITSの日本語化が完了しています。
ITIL® 4は、ITサービスに携わるすべての組織・個人に有用です。
その対象は、運用や開発部門に限定されません。特に上位資格であるCDS、DSV、HVIT、DPI、DITSは、リーダーやマネージャの方が顧客の価値につながる協働についての理解を深め、変化の激しい市場で組織を成功に導くためのヒントを、さまざまな角度で獲得できます。
また、事業責任者などビジネスサイドの方々にも、価値あるサービスの提供アプローチを模索する上で、たいへん有益なインプットとなります。
なお、ITIL® 4の土台となるファンデーション資格は、特定の役割・階層の方のみならず、組織内のさまざまなレイヤー、役割の方にも学んでいただくことで、共通言語、そして共通の認識を持つことが可能になり、より高い効果を発揮します。
ITIL® 4 スペシャリスト:作成、提供およびサポート (CDS)では、「そうそう、これがしたかったんです!」と顧客に喜ばれるITシステム(※1)をどのように作り、提供していけばよいのかという方法論を学びます。
(※1)このように喜ばれるITシステムのことを、ITサービスと呼びます。
まず顧客は誰なのかを定義し、顧客の声を聴いて本当に求められているITサービスの設計について学びます。
また、顧客に提供する価値を生み出し続ける組織に必要な構造やチーム・カルチャー、そして自身の経験を活かして業務を組み立てる手法を学びます。
CDSは「作成、提供およびサポート」の名前の通り、価値あるITサービスを顧客に届ける最も基本的な部分に関する内容です。ITIL® 4上位コースの中でどれから学習しようかと悩まれている場合は、取り掛かりやすいという点で本コースを一番初めに受講いただくことをお勧めします。
ITIL® 4 スペシャリスト:利害関係者の価値を主導(DSV)では、サービスに関わるすべての利害関係者が、サービスを通して価値を得られるように牽引するための方法論を学びます。
昨今、サービスの機能・品質面などの機能的価値だけでなく、顧客体験(サービスを利用する過程でお客様が体験する様々な事象)も価値を生むということを理解する重要性がますます高まっています。また、サービスを顧客に提供する一連の過程で、サービス・プロバイダとも適切な関係性を保ち、価値を共創できる状態にすることが不可欠です。
そこで、顧客とサービス・プロバイダに対して、カスタマ・ジャーニーの各ステージにおいて何に気を付け、何を実施すべきかを学びます。
お客様を中心とした利害関係者全体の関係を意識し、俯瞰したサービス提供を行うのに役立ちます。
ITIL® 4 ストラテジスト:方向付け、計画、改善(DPI)では、目標を定め、その目標に向かってチームや組織が一丸となって進んで行くための主要なポイントについて学びます。
組織全体のビジョンやミッション、達成目標を各部門やチームにブレークダウンする方法や、それに伴う権限移譲の設計の仕方、目標に対して組織がきちんと成果を上げているかどうかを確認しさらに改善するためのフィードバックの上げ方なども含まれています。権限移譲された各部門やチームが、しなやかで自律的に活動できる組織の作り方についても知識を習得します。
また、各部門やチームにガバナンスを効かせるための方法や、リスク管理への取り組みにも触れます。
また、組織全体が変化する環境に対応し、顧客の求める価値を実現し続けるための「継続的改善」や「組織変更の管理」などの方法についても知ることができます。
組織改革や、組織開発を成功させるための一つの方法論としても最適な内容です。
ITIL® 4 スペシャリスト:ハイベロシティIT(HVIT)では、組織がITを活用しながら、高速に改善を重ね、価値を生み出していくにはどのように振る舞うとよいのかを学びます。
VUCAの時代に相応しいIT活用のモデルとして、事業部門とIT部門の壁を無くし、デジタル技術を使って高速にビジネスを展開する事業モデル(言い換えるとDX)を築くことが求められています。
このような組織を実現するために必要な要素として、複雑性思考、アジャイル、DevOps、CI/CD、AI活用、マイクロサービスアーキテクチャ、心理的安全性やストレス予防などに触れ、詳しく解説しています。
ITIL® 4 リーダー:デジタル&ITストラテジー(DITS)では、「事業戦略」「IT戦略」に加え「デジタル戦略」の3つの戦略の検討から始まります。変化の激しい現代のビジネス環境にふさわしい、スピード感のある戦略立案、実行、軌道修正の考え方を学びます。
DX戦略を実装するうえで必要なビジョンの設定、目標の達成、成果を客観的に確認するための測定や結果の分析を経て、最終的にはどのようにして推進力を維持するのかまでが7つのステップとして提唱されています。
デジタル・ディスラプションの時代においては「変化を生み出すのか?変化に巻き込まれながらも生き残るのか?」と、自組織のデジタルに関する現状と目指す将来像をしっかり見極めつつ、環境の変化を受け入れながら戦略さえも俊敏に変化して推進していくことが重要です。そのためには技術だけでなく、組織の革新も必要となります。DITSでは「サーバントリーダーシップ」や「SECIモデル」など組織の変革と成長を推進するための考え方についても学習します。
<DITS研修を受講及び受験いただく際の注意点>
DITS研修コースは、最低3年間の実務におけるITマネジメント経験のある方を対象に設計されております。
また、受講ならびに受験に際しITIL® 4ファンデーションの内容の理解が重要となります。
ITIL® 4 マネージングプロフェッショナル移行(MPT)によりManaging Professional(MP)資格を取得されている場合、改めてITIL® 4ファンデーションの資格を取得する必要はありませんが、ITIL® 4ファンデーションの理解に不安がある場合には学び直すことをおすすめします。
ITIL® 4上位コースについて、戦隊ものに例えて楽しく解説した記事もございますので、ぜひご覧ください。
これまで紹介した5つのITIL® 4上位コースを含め、ITIL® 4を体系的に学ぶことは、最新のIT技術を活用し、顧客により価値あるサービスを提供する上で非常に役立ちます。
また、職務上の立場や役職に適した内容を学習することで、実務に役立てる事が可能です。ぜひITIL® 4を組織の成長戦略に組み込んでみてはいかがでしょうか。
定期開催されているオープンコースのほか、個社開催も可能です。詳しくはぜひお気軽にお問い合わせください。